今回は、相続対策の5つの分類について見ていきます。※本連載は、公認会計士・税理士で、経営塾「未来ネット」を主催する、税理士法人みらい・辻中修氏の著書『 よくわかる! 相続への対応 改訂増補版 』(三恵社)の中から一部を抜粋し、相続に関する基礎知識から実際の相続対策、国際税務の概要までやさしく解説していきます。

相続で最も時間がかかるのは「相続人間の調整」

1.概要

(1)相続対策の分類

相続対策といった場合、一般には相続税の節税対策を指すことが多いですが、相続では、相続人間の争い、事業の承継問題、相続税の納税、残された配偶者の扶養等多くの問題があります。このような相続問題に対し、事前に対応策を検討し、これを実行することで、相続が円満に進むようにすることが相続対策です。

 

相続対策をあえて分類するならば、次のようになります。

 

①相続税対策

納付すべき相続税が発生する者にとって、相続税をできるだけ少なくしたいと考えるのは自然なことです。相続税法や財産の評価方法を理解することで、ある程度の節税をすることが可能です。また、できるだけ早い段階から対策を検討し実行することが有効な方法です。

 

②争続対策

相続で最も時間がかかるのが相続人間の調整です。多くの者ができるだけ多くの財産を取得したいと思うのは自然のことであり、この相続人間の欲望を調整する必要があります。

 

親としては、残された財産を巡って、相続人間で争いをすることを望みません。このため、生前において相続人間の争いをできるだけ避けるための対策(以下「争続対策」という)が必要になります。

「資金繰り」をしっかり念頭に置きたい資金対策

③事業承継対策

事業を営む親が家業を子供に継がせようと考えるのは、どの時代でも、どの国でも同じです。しかし、事業承継を考える場合、事業の将来性、後継者の問題、相続税の負担等多くの問題があります。できるだけ円滑に事業承継できるようにするには、早い段階で現状や問題点を把握し、その対策を検討し、実行することが必要です。

 

④資金対策

相続税対策のため、多額の借入金でもって資産を購入し相続税を減らしても、相続人には多額の借入金の返済という問題が残ります。過去において、多額の銀行借入金で相続税負担は少なくなったが、銀行借入金の返済ができず相続財産のみならず、所有する財産すべてを失ってしまう事例が多くありました。

 

資金繰りを考えた相続税対策、納税対策が何よりも必要です。

 

⑤二次相続対策

相続対策では、一次相続(夫婦のうち早く死亡する者の相続)ばかりでなく、二次相続(残された配偶者の相続)をも考えて対策することが重要です。例えば、一次相続に適用できる配偶者の税額軽減が二次相続では適用されないことから、一次相続対策の段階で二次相続を考えて行動することが必要となります。

本連載は、2016年12月9日刊行の書籍『 よくわかる! 相続への対応 改訂増補版』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

よくわかる! 相続への対応 改訂増補版

よくわかる! 相続への対応 改訂増補版

辻中 修

三恵社

相続に必要な知識、相続の手続き、相続財産の名義変更、遺言書や遺留分、寄与分や特別受益、遺産分割、財産の評価、非課税財産、延納・物納や納税猶予、海外の相続税等。申告・納税と相続対策:相続税の申告書を提出しなければ…

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