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業績不振から立ち直る・・・経営者に求められる姿勢とは?

前回は、需要縮小による倒産の危機を回避するためのポイントを解説しました。今回は、業績不振から立ち直るために、経営者に求められる姿勢を見ていきます。

経営者は他者の声に耳を傾ける度量を持つべき

右肩上がりの時代は、どんぶり勘定でも、製品を作れば売れて儲かった。しかし成熟市場を迎えた現在は、財務力を武器に事業戦略を組み立てなければ資金不足に陥り、経営を傾かせてしまう。会計力を含めた経営リテラシー(企業経営に必要な戦略、マーケティング、財務、人事などの基礎知識と活用能力)を総合的に身につけた、ひと握りの経営者だけが生き延びることができるのだ。

 

だが現実的には、経営リテラシーを完ぺきに備えた経営者などほとんどいない。では、ほとんどの経営者は会社を潰すしかないのかといえばそんなことはなく、外部の力を必要に応じて取り入れて、企業経営すればいいのである。からだの健康維持には医師の存在が欠かせない。同じように、企業が健全経営を続けるためには経営の専門家のサポートが不可欠であろう。

 

大切なのは「客観的な視点」でのアドバイスを求めること。「岡目八目」という言葉があるように、もともと第三者のほうが企業内部の問題点を正しく、冷静に、時に冷酷に見極められるものだ。ましてや、その道の専門家のタイムリーな指導、助言、協力は企業経営に必要不可欠である。

 

外部の視点を取り込む際、経営者は他者の声に耳を傾ける度量を持たなければならない。専門家の苦言に耳をふさぐのではなく、まず素直な気持ちで受け入れてみる。

 

その上でアドバイスを自分の頭で咀しゃくし、経営の判断材料として参考にするのだ。どんなに優れた人間でも、一人の力はたかが知れている。「三人寄れば文殊の知恵」ではないが、異なる視点を受け入れることで、専門的・多面的視野で経営判断ができる。そうすれば、時代の趨勢(すうせい)を読み間違えるリスクを軽減できるだろう。間違っても、ドーバー海峡を一人で泳いで渡ろうなどという狂気の沙汰をしてはいけない。安全な船に乗ることを考えるのが経営者の仕事である。

「国の援助」の恩恵を受けやすい中小企業

これからの時代を生き延びるためにもう一点、大切なことがある。自社の財務力だけで業績不振から立ち直ろうと孤軍奮闘するより、国の援助というエンジンを積んで推進力をつけたほうが回復が早く、確実だということだ。

 

こう考えてみてほしい。中小企業は川に浮かぶ小さな舟だと。その舟がマイナス成長という時代の波に乗せられ、川下に向けてゆっくりと押し流されている。ところが船頭(経営者)は〝ゆでガエル〞状態で、1キロ先に落差の大きい滝壺が待ち構えているにもかかわらず自身の置かれている状況を理解していない。

 

そのまま流され続けると、滝壺に飲み込まれるのはもう間近……。ところが船頭はそのことに気づかず、のんきに構えて煙草をふかしているのである。「こら船頭、早く流れに棹させ!もう後がないぞ!」

 

私は小舟の末路が見えるので、必死に叫ぶ。しかし船頭は「なんのこっちゃ?」と聞く耳を持たない。大胆不敵に笑いながら、よく見ると酒まで飲んでいるではないか。やがて、一瞬の静けさのなかで轟音とともに川の先の途切れに気づく。いよいよ目の前に滝壺が迫っていたのだ。この段階でようやく船頭は阿鼻叫喚、自力で棹を操って舟の向きを変えようとする。急場しのぎで売上拡大や経費削減に必死に取り組もうとする。しかし時すでに遅し。川の流れは滝壺に吸い込まれるように勢いを増し、もはや自力では流れに抗うことはできない。舟はそのまま滝壺に吸い込まれて木っ端微塵、船頭だけでなく乗員(社員)も積荷もすべて跡形もなく砕け散るだろう。

 

この場合に助かる方法は二つ。一つは、経営者がもっと早い段階で自社の危機的状況に気づき、先手先手で必要な対策を講じること。流れのいまだ緩やかなうちに手を打てば、比較的たやすく原状回復に持ち込めるし、その後は自力運航が可能となる。

 

そしてもう一つは、前述したように国の支援というエンジンを積むこと。強力な動力源でスクリューを回せば小舟は簡単に旋回し、流れに逆らって川上(業績回復)に突き進んでいける。ある意味で舟が小さいほど小回りが利き、回復も早い。つまり大組織よりも中小企業のほうが国の支援策の効力が大きいということである。

 

経営環境が厳しい時代には、厳しい時代なりの理論がある。肩ひじを張って他者をはねつけるのではなく、「外部の専門家や国の支援など、使えるものは使い倒してやろう」というくらいの前向きな経営改善に取り組んでもらいたい。

 

京都ビジネスコンサルタントセンター 代表取締役
税理士/経営コンサルタント/社会保険労務士/行政書士 

昭和10年京都生まれ。
昭和31年学卒、会計事務所勤務を経て、民間食品製造会社入社。
その後公的機関で経営指導員として企業診断、経営診断、経営相談・指導に従事。指導対象企業は1万5000社を超える。
昭和47年4月1日石原会計事務所を開業。同月14日京都ビジネスコンサルタントセンターを設立し、代表取締役に就任。会計事務所経営と併せて、43年間にわたり中小企業の経営助言・支援・指導に積極的に取り組む。
昭和56年、異業種組合たる仁智会事業協同組合の府認可・設立とともに代表理事に就任。京都府より委嘱された特別経営指導員および中小企業復興公社経営診断員として商工行政にも深くかかわり、京都商工会議所にて小規模事業者経営改善資金審査会の審査委員および同委員長を13年務め、延べ1万社以上の中小企業融資審査を行っている。
また京都府農業会議にも顧問として参画し、遊休荒廃農地の解消、集落営農・地域農場づくりにも力を注いでいる。

著者紹介

連載「万年黒字経営」を実現するための鉄則

本連載は、2017年3月16日刊行の書籍『どんな不況もチャンスに変える 黒字経営9の鉄則』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

 

どんな不況もチャンスに変える黒字経営9の鉄則

どんな不況もチャンスに変える黒字経営9の鉄則

石原 豊

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の企業の約7割は赤字という現実があります。現在の日本企業の回復基調はあくまでも一時的なものであり、ほとんどの中小企業は根本的な解決には至っていません。また、人手不足や消費の冷え込みといった課題があるように、…

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