今回は、地域的経済統合の種類とその概要について見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

統合の度合いによって5段階に分類

地域的経済統合は、その統合の度合いによって5つの段階に分けることができます(図表1)。この表の下に行くほど統合の度合いが強くなります。

 

[図表1]経済統合の諸段階

 

以上の違いを図示すると、次のようになります。

 

まず、WTOの原則は、ある国に与えた最も有利な貿易条件(= 最恵国待遇)をすべてのWTO加盟国に与えるというものです。したがって、すべての国に同じ関税率を適用しなければなりません(図表2)。

 

[図表2]WTOにおける原則

加盟国内の関税がゼロになる「FTA」

これに対してFTAの場合、FTAを結んだ国に対しては関税をゼロにすることができます(図表3)。FTAと似た概念にEPA(経済連携協定)がありますが、これはFTAより広い概念で、貿易だけではなく、外国人労働者を受け入れるルールや、お金の移動を自由にする投資規定なども含んだものです。FTAやEPAは1990年代に入ってから急増しています。

 

FTAやEPAには、貿易創出効果と貿易転換効果という二つの効果が生まれます。貿易創出効果とは、域内の関税が撤廃され、域内の貿易が拡大する効果をいいます。

 

[図表3]FTA(またはEPA)を結んだ場合

 

一方、貿易転換効果とは、関税を課される域外からの輸入をやめて、域内の国からの輸入に置き換える効果をいいます。一方、関税同盟の場合は、同盟を結んでいる域内では関税が撤廃され、外国(域外)からの輸入には共通関税をかけることができます(図表4)。

 

[図表4]関税同盟を結んだ場合

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

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南 英世

ベレ出版

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