前回は、米国・英国におけるフィデューシャリー・デューティー発展の歴史について取り上げました。今回は、「顧客本位の業務運営に関する原則」の概要を見ていきます。

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「顧客本位の業務運営」の実現を目指す金融庁

2017年1月19日に、日本版フィデューシャリー・デューティーである「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」を金融庁が公表しました。この原案を基に3月30日、「顧客本位の業務運営に関する原則」の確定版を公表し、金融庁としての顧客本位原則の定着に向けた取組みについて公表しました。この原則の中では、本原則の制定の経緯及び背景、本原則の目的、対象などの事項を記述した上で、金融事業者が守るべき7項目の原則が揚げられています。今回は、本原則の目的、対象、制定までの経緯、背景、アプローチ方法などの全体像を説明します。

 

まず、本原則の目的として「金融事業者が顧客本位の業務運営におけるベスト・プラクティスを目指す上で有用と考えられる原則を定めるものである。」と記しています。本原則の対象となる「金融事業者」という用語を特に定義しておらず、「顧客本位の業務運営を目指す金融事業者において幅広く採択されることを期待する。」と示されています。

 

本原則が採用するアプローチとしては、金融事業者がとるべき行動について詳細に規定する「ルールベース・アプローチ」ではなく、金融事業者が各々の置かれた状況に応じて、形式ではなく実質において顧客本位の業務運営を実現することができるよう、「プリンシプルベース・アプローチ」を採用しています。

 

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投資者保護のための取組みが進められてきたが・・・

「プリンシプルベース・アプローチ」について、もう少し詳しく見ていきましょう。市場ワーキンググループが2016年12月12日に公表した報告書で、以下のように提言されました。

 

これまでは、金融商品の分かりやすさの向上や、利益相反管理体制の整備といった目的で法令改正等が行われ、投資者保護のための取組みが進められてきたが、一方で、これらが最低基準(ミニマム・スタンダード)となり、金融事業者による形式的・画一的な対応を助長してきた面も指摘できる。

 

本来、金融事業者が自ら主体的に創意工夫を発揮し、ベスト・プラクティスを目指して顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、より良い取組みを行う金融事業者が顧客から選択されていくメカニズムの実現が望ましい。そのためには、従来型のルールベースでの対応を重ねるのではなく、プリンシプルベースのアプローチを用いることが有効であると考えられる。

 

具体的には、当局において、顧客本位の業務運営に関する原則を策定し、金融事業者に受け入れを呼びかけ、金融事業者が、原則を踏まえて何が顧客のためになるかを真剣に考え、横並びに陥ることなく、より良い金融商品・サービスの提供を競い合うよう促していくことが適当である。


つまり、金融事業者は、本原則を外形的に遵守することに腐心するのではなく、その趣旨・精神を自ら咀しゃくした上で、それを実践していくためにはどのような行動をとるべきかを適切に判断していくことが求められます。

 

金融事業者が本原則を採択する場合には、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定し、当該方針に基づいて業務運営を行うことが求められます。自らの状況等に照らして実施することが適切でないと考えられる原則があれば、一部の原則を実施しないことも想定されていますが、その際には、それを「実施しない理由」等を十分に説明することが求められます。

 

「顧客本位の業務運営に関する原則」は法令上のルールに基づく法的拘束力を有する規範ではなく、各金融機関が自立的に定めるルールで、「ソフト・ロー」と呼ばれるものです。これに従わないと罰則や行政処分の対象になるものではありません。しかし、現実的には、金融機関が本原則を受け入れないという選択をすることは難しいと思われます。

 

次回からは、7項目に分かれている「顧客本位の業務運営に関する原則」を詳しく解説していきます。

 

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本連載は、一般的な投資信託の仕組みなどを紹介することを目的にしています。投資を促したり、筆者が所属する「幻冬舎アセットマネジメント」に勧誘することを目的としたものではありません。また、投資にはリスクがあります。リスクに十分に考慮をして、投資判断を行ってください。本連載の内容に関して投資した結果につきましては、著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

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