相続対策として法人保険を活用すれば、自社株評価を引き下げ、後継者へのスムーズな移転が可能です。本連載では、法人保険を活用した「事業承継対策」について具体的に紹介していきます。

しっかり準備しておきたい債務返済資金

オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル~相続対策編では、相続対策として個人契約の生命保険を利用した対策について見てきましたが、本連載では法人を活用した相続対策スキームを見ていきます。相続時に法人が準備すべき資金は、主に次のようなものがあります。

 

●債務返済資金

●当面の運転資金

●死亡退職金

●自社株の買い取り資金

 

債務返済資金とは、いわゆる借金の返済です。社長が死亡した場合、特に中小企業では、債務の一括法人で確保するべき相続時の事業保障返済を求められることがあります。また、保証協会を通した債務については、銀行ではなく、保証協会から債務の返済を求められることもあります。後継者がしっかり育っていて、今後も問題なく返済が可能であれば、債務の組み換え、借り換えなどが可能だと思いますが、会社全体の信用を磐石なものにするためにも、債務返済資金はしっかり準備しておきたいところです。当面の運転資金や死亡退職金についても同じく、きちんと準備すべきでしょう。

 

最後の、自社株の買い取り資金の準備は、後継者への自社株承継に関連して重要となってくるものです。相続人である息子が後継者と決まっていても、自社株に対する相続税を支払える余力が息子にあるとは限りません。また、相続税を支払うために、後継者が銀行から融資を受けるということも、簡単ではありません。そうなると、後継者の株を法人で買い上げて、相続税の納税資金をつくるということも選択肢にあがります。

保険の「ふやす力」を活用する

法人が相続時に必要とするこれらの資金が1億円だと仮定した場合、どのように保険を活用できるかを見てみましょう。下記図表は、社長が死亡した際の死亡保険金を「1億円」で設定した、100%損金の掛け捨ての定期保険です。契約形態は法人が契約者、55歳社長が被保険者、死亡保険金の受取人が法人です。法人が毎年200万円の保険料を支払うことで、社長が死亡した際に、法人に1億円が支払われます。掛け捨てなので解約返戻金はありませんが、35年目で社長が90歳を迎えても、累計7000万円の保険料に対して1億円の保険金ですから、保険の「ふやす力」(レバレッジ効果)がしっかり効いています。つまり、1億円の資金を準備するのに、1億円を預貯金で確保する必要はなく、最大7000万円の負担で準備をすればいいということになります。

 

[図表]法人が、100%損金・掛け捨ての定期保険を活用した場合のイメージ

 

さらに、当該法人の法人税の実質税率が33.8%だとすると、保険料の100%が損金に算入されることによって、毎年67.6万円の税額軽減が期待できます。法人税の67.6万円の税額軽減の効果を加味すると、毎年の実質の保険料は、200万円から税額軽減分67.6万円を差し引いた132.4万円となります。そうなると、保険の「ふやす力」はより高く計算できることになります。ただし、この契約において注意が必要な点があります。注意点については、次回解説します。

本連載は、2016年9月16日発売の書籍『オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル』から抜粋したものです。
本原稿は、一般的な生命保険活用スキームを示したものであり、データやスキームの正確性や将来性、投信元本の利回り等を保証するものではございません。個別具体的な法令等の解釈については、税理士等の各専門家・行政機関等に必ずご確認ください。記載されている保険商品のイメージ図につきましては、概算値を表示しています。各スキームの導入時は約款や契約概要、パンフレットを必ずご覧ください。なお、本連載で示している「契約者」とは、保険料を支出する人で、契約の変更・解約などの権限を持っている人、「被保険者」とは、保険をかけられる人、その対象となる体を提供する人をいいます。

オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル

オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル

幻冬舎ゴールドオンライン編集部

幻冬舎メディアコンサルティング

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