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収益性を徹底的に重視したい「相続対策としての賃貸経営」 

前回は、着手の手順に注意が必要な「納税資金対策」と「相続税対策」について取り上げました。今回は、相続対策としての賃貸経営においても収益性が極めて重要な理由を見ていきます。

アパートの建築で日々の生活が苦しくなっては本末転倒

相続対策のポイント①収益性を確保する

 

では、ここからは実際に相続対策を構築していく上での考え方、手法をご紹介していきます。ポイントは5つ。それぞれのポイントに沿って、具体的な事例を挙げつつ解説していきましょう。

 

私がお客様によくお話しすることがあります。それは、「相続税対策の前に、所得対策、つまり現状の生活を維持するための所得の確保、キャッシュフローをしっかりと確立させてください」ということです。「いい加減、節税の話を早く聞きたい」という方も、少しご辛抱いただきお読みください。

 

わかりやすく例え話で解説いたしましょう。所得対策はスポーツでいえばボクシング。1ラウンドでノックアウトされたら、それでおしまいとなるように、日々のお金がショートしてしまったら、そこからの生活は成り立ちません。一方、相続税対策は野球にたとえられます。9回裏2アウトでも逆転可能なように、やり方によっては、人生の最終で巻き返すことも可能なのです。

 

たとえば、賃貸物件を建てれば、相続税評価減にはつながりますが、その後も月々のローンの返済、固定資産税の負担、10数年後の修繕に対する積み立てなど、さまざまな負担がつきまといます。相続発生時のための対策を優先したがために、そこで日々の生活の収支が回らなくなってしまっては、意味がありません。

 

だからこそ、相続対策においても「収益の確保」を優先すべきなのです。ですから、すでに指摘したように、「相続税対策なので、儲からなくていいのです」賃貸経営を勧める業者がそんなふうにうそぶいたとしても、決して真に受けないでください。所得対策が大前提であることに加え、なんのために、誰のために相続対策をするのか。冷静に考えていただきたいのです。相続対策で賃貸アパートを建て、利益はトントンだったけれど、相続税は減額できた。百歩譲ってそこまではいいとしても、遺産分割をする際に"儲からないアパート"を誰が相続したいでしょうか。

 

相続対策は次世代になるべく多くの財産を遺すためにほかなりません。つまり、相続税を払う時だけのためだけでなく、相続人の生活の糧にならないといけない。かえって重荷になったのでは本末転倒です。そして、納税のために資産全部を売却せざるをえない事態に陥らないよう、その資金対策のためにも収益をしっかり上げていかねばならないのです。

「物納」のハードルが上がったことも理由のひとつ

また、相続税を、土地や家といったモノで支払う"物納"の条件が厳しくなったことも、収益確保を重視する理由の一つです。正確にいえば、相続税の現金納付が困難な場合は、まず延納(分割払い)、それでもムリな場合に物納が認められるという基本は変わりありませんが、平成18年の税制改正において、延納、物納を申請する際の条件が厳格化されました。

 

その条件は、「金銭納付を困難とする理由書」が必要となることです。内容は、相続した財産はもちろん、相続人の財産も換金した上での現金納付が義務付けられ、遺された相続人家族の生活費でさえも、3人家族で月額19万円しか考慮してもらえないというもの。かなり厳しい条件です。ただし、念のために申し上げると、物納の手段がまったくないというわけではありません。「相続したその不動産の物納でしか納税できない状況を作りあげること」で、物納を可能とする方法は存在します。

 

たとえば、収入も資産もない孫を養子縁組します。その孫に対し、その物納予定地で相続税の納税ができるように、他の不動産と併せて相続させます。その際、物納予定地以外の不動産は「物納不適格財産」にするといった、ひと工夫が必要になります。具体的には、抵当権がついている不動産を相続させる、あるいは共有不動産の持ち分を相続させるといった手法を使います。そうすれば、収入のないこの孫は、物納予定地でしか納税ができなくなるため、物納が可能となるというわけです。当然、生前に確定測量を終わらせておくなどの事前準備も重要です。

 

私どもは、この手法を「戦略的物納」と呼んでいますが、事前に入念な準備をしておかない限り、そのハードルはかなり高いといっていいでしょう。だからこそ、賃貸経営をするならば、現実的に物納は不可という大前提で「きちんと現金を生んでくれるアパート」を目指すことが大事なのです。

株式会社財産ブレーントラスト 代表取締役

1958年7月生まれ。94年、株式会社船井財産ドック(現在東証第二部に上場している株式会社青山財産ネットワークス)に入社。97年に事業部長、2001年に取締役に就任、04年東証マザーズ上場時に、上場の鐘を叩く。05年現場での仕事にこだわり、執行役員に降りる。08年、再度取締役に就任。09年、全国ゴルフ練習場連盟の理事に就任する。10年に退任。
12年12月、一人ひとりのお客様に対して、もっと深く密な財産コンサルティング業務に特化したいとの思いから、株式会社財産ブレーントラストを設立。
著書に『あなたの土地の有効活用はやめたほうがいい』『不動産現金化の時代』『あなたの資産 再生いたします』『改訂版 あなたの土地の有効活用はやめたほうがいい』(全て実業之日本社)、『都心不動産 買い方のコツ』『地主心得帳』『買ってよい不動産・悪い不動産』『3年後 崩壊する地主・生き残る地主』(全てPHP新書)等。

著者紹介

連載悪徳業者に騙されないための相続対策「5つのポイント」

本連載は、2016年10月9日刊行の書籍『あなたの資産を食い潰す「ブラック相続対策」』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

 

あなたの資産を食い潰す 「ブラック相続対策」

あなたの資産を食い潰す 「ブラック相続対策」

秋山 哲男

幻冬舎メディアコンサルティング

恐ろしい「相続対策の裏側」と「知っておくべきポイント」を大公開! ・相続税対策のうち8割が実は不要!? ・バックマージンが横行する業界の実態 ・相続後にお荷物と化す無意味なアパート・マンション ・税理士のうち約半数は…

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