改革で整理が求められる「ゾンビ(僵户)国企」
中国では2016年末〜17年初、国有企業(国企)改革の論考、報道が相次いだ。近年、民間部門がGDPの半分以上、新規雇用の7割以上を創出する一方(16年5月3日付中国共産党新聞網)、国企の経済への貢献は年々低下している。
他方で、国企の経営効率は私企業に比べ低く(例えば16年、資産100元あたり営業収入は私企業185.3元に対し国企59.5元、国家統計局)、過剰設備、巨額の債務を抱える企業の大半も国企だ(各種推計で国企を含む企業債務対GDP比は15〜16年150〜170%)。
上海と深圳に上場されている企業は17年3月時点で3118社、うち国企が上場している企業は1001社(中央国企上場企業350社、地方国企上場企業651社)で、その営業成績を見ると、13〜15年、1001社のうち、純利潤がプラスの伸びを示したのは272社に止まり、残り729社はマイナスの伸びだった(内訳は、北京120社のうち76社、上海102社のうち65社、広東95社のうち62社など)。
また、1001の国企上場企業のうち31が過去2年営業年度連続赤字を記録して上場廃止警告の対象となっており(中国で「被星戴帽」状況にあると称される)、これは警告対象全体の43%を占める(Wind資訊、3月6日付範文網)。改革を通じ、ゾンビ(僵户)国企を整理していくことが中国経済の鍵を握ると見られる所以だ。
[図表]国有企業と私企業、効率性比較
中国は「世界の工場」と呼ばれてきたが、イノベーションはもっぱら進出外国企業に依存してきた。ハイエンドデジタル制御システムの95%、マイクロチップの80%、ハイエンドハイドロ―リックシール・エンジンのほぼ100%が輸入に依存、全体としてハイテク技術の対外依存度は50%以上という(先進国は概ね30%未満、江蘇省工業情報化協会)。
研究開発投資が企業家精神に欠け経営が非効率な国企を中心に行われてきたため、イノベーションに繋がっていない。党や政府との癒着、汚職の温床といった体制面の問題を別にしても、資源浪費の割には国民経済への貢献が小さいという問題がある。
進む董事会や監事会の設置
現在進められている国企改革の基礎は2015年9月、国務院と党中央委の混合所有制推進を柱とした「国企改革深化に関する指導意見」、16年2月国務院国有資産監督管理委員会(国資委)公表の董事会権限強化等の具体的改革項目を含む「10項改革試点方案」だ。
その後、中央・各地方が順次細則方案等を発表、一連の関連文書は「1+N文件体系」と称される。16年までに、党中央委が7つの専門文書、国資委等関連部門が36の関連文書を公表、文書策定から本格実施へ、国資委主導の国企再編から発展改革委主導の混合所有制推進へと局面が移行しつつあるという認識が強まっている。地方でも、17年に入り3月末までに、20以上の省が混合所有制推進をうたった文書を公表した。
[図表]2016年以降主要会議での国企改革への言及
改革はどう進んだか? 国資委によると、中央国企の92%以上が組織改革に着手、68%が混合所有制に移行、10の中央国企子会社が従業員持株(員工股)推進の試点に指定された。員工股は、国有資産流出のリスクなどが指摘され、これまで敏感な領域だったが、17年に入って各省政府が出した国企文書の大半が、標準的な改革項目の1つとしてこれを位置付けている(3月22日付第一財経日報)。ガバナンス面では、董事長の「一言堂」、鶴の一声で決まる状況を打破するため、85企業が董事会を設立、社外役員389名、外部専門役員26名が任命された。また宝鋼集団等4企業が市場での(副)総経理公募を実施した。
鉄鋼、石炭関連の中央国企は16年、各々1019万トン、3497万トンの過剰生産能力を削減、中央国企傘下の398のゾンビ企業を「処置・治理工作(有効に整理)」、17年はさらに300のゾンビ企業、500の特に困難な状況にある企業の処理を目指す方針という。地方政府については、山東を例にとると、58の省所管国企を混合所有制推進の試点に指定、また、以前はほとんどの省所管国企には董事会や監事会がなかったが、現在はすべてがこれを有する。市場を通じて「能進能出」、適材適所の(副)総経理を任命する試みも進んでいる。