改革が経営効率向上につながるかは未知数
国企の自主性を高めるため、国資委は21の許認可事項を廃止または権限委譲し、33の規則文書を廃止した他、国企管理監督部門の権力・責任のネガティブリストを含む明細を策定中だ。また16年、中国建材と中材集団、港中旅と国旅、中粮と中紡、宝鋼と武鋼、中儲粮総と中儲棉総を統合し、中央国企数は14年112から16年102へと減少した。国資委は17年も再編を進め、中央国企数は2桁台になるとしている。
しかし、15年9月「意見」は党の国企への関与を強め、国企を「做強做優做大」、強く優良で大きくすること、競争的領域にも国企が参入できることを明記している。16年末に開催された全面深化改革領導小組(党や国務院の下で政策アドバイスや調整を行う小グループ)の重要議題も、国企、国有資産に対する管理監督を強化することだった(16年12月6日付第一財経)。
16年10月発表された債務の株式化(債転股)は3か月間で3270億元、石炭や鉄鋼関連を含む27国企と5大国有銀行が関与し、「金融安定を目標にして、国企の経済における主導的地位を維持するため、その破産は許さないという中央の強い意志の表れ」(1月25日付自由亜洲台)で、また中国内でも「短期的に国企の債務負担は軽減するが、かえって経営改革が進まなくなる」モラルハザードの懸念が指摘されている(1月17日付新浪財経)。進み始めた員工股も、なお多くの国企は慎重で持ち株シェアを10%以内、また「骨幹員工」、中核となる従業員に限っているが、その明確な定義はなく、公平性の点で問題が残ると指摘されている(4月5日付経済参考報)。
16年、国企の利潤はこのところのマイナスの伸びから、久々に前年比6.7%増(1兆1751億元)とプラスの伸びに転じた。17年第1四半期も、国企の利潤総額は3996.3億元、対前年同期比70.5%の大幅増を記録している。中央国企についてみると16年、102社のうち99社が黒字、81社が黒字幅を拡大させた。鉄鋼、石炭など「大宗商品」と呼ばれる大口取引商品の価格が反転したこと、供給側構造改革として推進された過剰生産能力解消(去産能)、企業の生産コストの低減等、いわゆる「三去一降一補」の主たる対象が国企であること、国企の利潤の源泉が以前のエネルギーと原材料中心から、電子部品、医薬他ハイテク部門にも及んできたことが指摘されている(4月9日付経済参考報、2月28日付証券時報網)。
国企の営業成績が改善を見せていること自体はよいとしても、国企を以前にも増して経済活動の中心に据え、景気のけん引力にしようとする方向が顕著になっている。改革が国企の自主性、経営効率向上、ひいては経済全体の効率性向上につながっていくのかは未知数だ。
「かけ声は大きいが進捗は鈍い」国企改革
国企改革には「冷熱不均」、まだら現象がある(16年12月28日付経済参考報)。
第一に、小規模で機動性の高い地方国企に比べ、規模が巨大で管理部門も多い中央国企の改革は鈍い。例えば、中央国企はこれまで海外投資や外国企業の買収で主導的地位にあったが、10大海外買収案件に占める中央国企のシェアは、16年第一四半期28%、第2四半期10%と低下し、地方国企や民間企業に取って代わられている(社会科学院)。中央国企の幹部は当事者意識が薄く「他人の金で他人のために仕事をしている」、また「一板一眼」、規則に機械的に従うため、柔軟性、市場原理に沿った行為に欠ける一方、地方国企は地方政府の「真金白銀」、最も貴重な現金で、彼らの改革意欲は強い。
第二に、競争的領域で営業成績の悪い国企は、同業私企業の営業成績が良好な中で、改革なくしては生き残れないとの危機意識が強いが、非競争領域の国企は安定した営業が保証されており、改革意欲に乏しい(この関係で、国資委は「公共類」「商業類」の国企分類毎の改革方針の詳細を示した文書を準備中)。
第三に、地域によって改革スピードが異なる。「老工業地域」と呼ばれ、歴史的に国企依存が強い東北部は産業構造の多角化が進まず、国企の負債率は高く就業者も多い。景気減速、財政難を抱える地方政府の実行能力の問題も重なり、改革は鈍い(このため、国務院は特に東北部を対象とした改革案を昨年末公表)。地域毎に条件が異なり、「一刀切」、一律のやり方では改革を進められない。
「絆脚石(足手まとい)」、「攔路虎(道路通行の障害になる茎が細長い植物)」と称される、改革に伴う多くの困難を克服できるか。長らく「雷声大、雨点小」、かけ声は大きいが進捗は鈍い(1月4日付中国経済周刊)と揶揄されてきた国企改革は、2017年が正念場だ。