倒産した企業の半数は「業績不振ではない」!?
前回の続きです。
私が、赤字→倒産のプロセスに疑問を持っているのは、実際に倒産企業の決算書を調査してみたところ、半分以上が黒字決算だったからです。私が経営する会社の財務データをもとに倒産企業を調査したところ、増収で倒産した企業は42%ありました。そして、倒産した企業の62%が黒字でした。
ひょっとしたら、私どもの財務データには偏りがあるのではないかと思っていたのですが、同じような資料がありましたので、間違いないと思います。
[図表1]は、東京商工リサーチが公開している「2015年倒産企業の財務データ分析調査」から引用したものです。
これによると、調査対象の2015年の倒産企業565社のうち、前年度から減収となった企業は320社で、全体の56.6%でした。ということは、全体の43.4%は前年度比で増収または売上を維持して倒産したことになります。
倒産企業の半数近くが、いわゆる「業績不振」ではないのに倒産しているのです。
[図表1] 倒産企業の売上
「赤字決算と倒産」は無関係ではないが・・・
もう一つの指標を見てみましょう。
2015年に倒産した企業565社のうち、最新期の決算で赤字を計上した企業の比率は、46%でした。ということは、過半数にあたる54%は、黒字決算だったのに倒産したことになります。
この調査結果も、赤字→倒産というプロセスに反しています。
もちろん、倒産企業の46%は赤字だったわけですから、赤字決算と倒産とが無関係とは言えません。
しかし、倒産企業の半分以上が黒字倒産というデータは、必ずしも赤字が倒産の要因ではないことを示しています。
つまり、売上不振や業績不振は、それだけでは倒産の兆候と見ることはできないのです。逆に、売上が増収で、黒字を継続していても安心とは言えないのです。
そもそも、売上の減少や赤字決算は、決算書を見れば誰でもすぐにわかる明白な事柄です。それだけで倒産企業が予知できるのだとしたら、財務分析を行う必要はありません。
増収、黒字決算でも倒産する企業が数多くあるからこそ、決算書分析のノウハウが求められているわけです。
[図表2] 倒産企業の利益