住宅街に位置し、正面道路も狭い…
成功例⑥ ― 使い勝手が悪くてもテナントによっては重宝される
一風変わったユニークなテナントが付いた例を紹介しましょう。
Fさんが購入したのは、東京23区にある平屋の倉庫でした。面積は400坪ほどあり、広さは申し分なかったのですが、難点がいくつかありました。
まず、建物の真ん中には仕切りがあり、必ずしも使い勝手がよいとはいえませんでした。また、住宅街にあるため、大きな音は出しにくい環境でした。さらに正面道路は狭く、駐車場のスペースが広くなかったため、大型自動車の出し入れは容易ではありませんでした。
このように倉庫としては必ずしも理想的とはいえない物件でしたが、Fさんが全く想定していなかったような意外な借り手が現れました。大手通販会社の戊社が、「通販カタログに掲載する商品の写真を撮影するためのスタジオとして借りたい」と言ってきたのです。
4トン車があれば撮影に必要な商品は全て運び込むことができたので、正面道路や駐車スペースの狭さは、戊社にとってはさほど気になりませんでした。他方で、倉庫は駅から10分ほどの距離にあったため、モデルや撮影スタッフが徒歩で通えるというメリットがありました。
Fさんとの間で契約を終えた後、戊社は、様々なシチュエーションの写真を撮れるよう倉庫内に小さな部屋をいくつもこしらえました。
テナントの倒産による被害を最小限にとどめるには?
余談になりますが、Fさんの前のオーナーの時に、この物件をテナントとして借りていた会社は業績が悪化して倒産しています。
借主が倒産した場合、ことに破産した場合には、賃料は支払われなくなりますし、破産管財人によって借主の所有する資産は全て差し押さえられてしまいます。差し押さえられた資産は、最終的に現金化され債権者に平等に分配されます。賃料が未納の場合、貸主も債権者の一人となるので、金銭の配分を受け取ることができますが、その額はごくごくわずかです。
しかも、貸していた建物にはテナントの出したゴミや残置物等が大量に残されたままとなるので、その処理のために多額の費用を費やさなければなりません。「滞納していた家賃やゴミ処理にかかった費用は、預かった保証金(敷金)から差し引くことができるのでは?」と思うかもしれませんが、保証金も破産管財人に差し押さえられているので、オーナーの自由にはなりません。つまり、借主が倒産してしまうと、賃料の未払い分やゴミ処理費用を保証金によって埋め合わせることはできないのです。
このように、借主が万が一破産するようなことがあれば、貸主は「賃料を得られない」「ゴミ等の処理費用を支払わなければならない」「保証金によってカバーされなくなる」という三重苦に苦しむことになるかもしれないのです(これは、工場・倉庫に限らず、マンション、アパートやオフィスビルなどに関しても同様です)。
テナントの倒産によってもたらされる、このような被害を最小限にとどめたいのであれば、借主の破産に対しても適切に対応できる不動産会社を選ぶことが必要となるでしょう。ちなみに、当社は、前のオーナーの依頼を受けて、倒産した賃借人と交渉し、滞納していた賃料を全て支払ってもらうことに成功しました。また、残置物についても、問題が生じないように一工夫しました。その結果、オーナーは、賃借人の破産によって全く損害を被ることがなかったのです。