企業の多くは「販路の確立」だけで安心してしまうが…
海外の顧客や販売代理店、つまり輸入者と直接取引をする方法を「直接貿易」といいます。海外の代理店との直接取引に自信がなければ、間に日本の商社や貿易会社などに入ってもらうこともできます。この場合、自社が直接に取引をするのは日本の会社なので、海外への貿易であることをあまり意識せずにビジネスができます。これを「間接貿易」と呼びます。
直接貿易を行っている一部の企業を除き、いずれの貿易形態にしても現地で販売活動を行っている会社と直接にコンタクトをとっていませんので、現地での反響やマーケティングの結果などのフィードバックを受けることが難しくなります。これが海外事業における現地マーケティングを難しくしています。
貿易により海外事業展開している多くの企業が、現地の販売代理店や商社などのいわゆる〝販路〟を見つけただけで、後は任せたとばかりに安心して、その後はただ製品を送るだけになってしまう傾向があります。
たとえ、販売は代理店に任せるにしても、製品やサービスを改善するためには、現場やお客さまの声をヒアリングすることが大切です。できれば〝販路〟経由であったとしても現場からのフィードバックを定期的に受けるようにするといいでしょう。
間に商社や貿易会社が入っていても、現地からのフィードバックを受けられるように契約することもできます。しかし、たいていの会社はそのような契約をしていませんし、商社や貿易会社も余計な手間を嫌う傾向にあります。
また、直接貿易であっても、現地のマーケティング・レポートを受け取る契約をしていない企業が多くあります。
しかし、海外にものを売るというのは、ただ単に商品を海外に運べばいいというものではありません。現地のニーズをきちんとヒアリングして、製品を現地に合わせてローカライズしていく作業が必要なのです。
ですから、海外に取引先が見つかる前はもちろんのこと、取引先ができてからでも、定期的に現地に飛んでマーケティングを行うことが大切になります。
顧客へのアフターフォローはヒアリングのチャンス
海外進出で最も大切なのが、現地に合わせたマーケティングです。現地の人のニーズを聞くこと、そしてただ聞くだけではなく製品を改善していくことです。
日本国内であれば当たり前のようにやっていることでも、心理的・距離的に離れた海外市場では、どうしてもマーケティングが疎かになりますから、意識してマーケティングを行うことが重要になります。
私がサポートさせていただいた企業では、社員が現地に行って、実際に製品を使っていただいているお客さまにアポイントメントをとって、使い心地や感想などをヒアリングして回っている例もあります。
また、販売するものによっては、使い方の説明や故障への対応などのアフターフォローが必要になる場合があります。
多くの企業は、現地の販売代理店にアフターフォローを任せてしまうのですが、お客さまと直接コンタクトがとれるアフターフォローは、絶好のヒアリングのチャンスです。
通常はあまり得られないお客さまからのクレームこそが、製品を改善させる種になります。
最初は、リソースに余裕もありませんから、アフターサービスは現地の販売代理店に任せるのは仕方ありませんが、その場合でもきちんとレポートをもらうような契約にしておきましょう。
また、将来的にはさらなる現地販売強化に向けて現地に社員を常駐させたり、販売拠点を築いたりなどの、現地支店の設立を視野に入れてみましょう。