前回は、交通事故補償はどのようにして行われているのかを解説しました。今回は、損害賠償の行方を左右する「過失割合」について見ていきます。

加害者に一方的な非があるケースばかりではない

交通事故が起きると、まず警察がやってきて現場検証や事情聴取を行うが、その後の損害補償のやり取りに関しては一切関与しない。警察は民事不介入の原則があり、刑事事件として立件するかどうかだけに関わっている。

 

補償のやり取りは当事者同士の話し合いということになるのだが、事故後出てくるのが、加害者が加入している任意保険の会社の担当者である。この担当者が以降補償に関する様々なやり取りの窓口になり、加害者と被害者の示談を取りまとめるという構図になっている。

 

保険金を支払う側の保険会社がまず行うことは当事者の過失割合を確定することだ。専門の会社が当事者の証言や現場の状況を確認し、これまでの事例を踏まえながら、妥当であると考えられる過失割合をはじき出す。交通事故においては加害者に一方的に非があるケースばかりではない。むしろ被害者の方にも不注意など事故発生に何らかの過失があるケースも多い。

 

そこで過失の割合を特定し、その割合に応じて両者が損害賠償負担することになっている。これを過失相殺というが、100対0の時もあれば80対20、60対40など状況に応じてその割合が変わってくる。例えば加害者に80%、被害者に20%の原因があり、損害額が1000万円とすると、被害者は損害額の20%を減じた800万円を損害賠償として相手に請求するということになる。

示談が成立しなければ裁判所に持ち込まれることに

過失割合を確定するとともに、保険会社の担当者は被害者の損害額を算出しなければならない。そこで治療費から通院の交通費、休業損害、後遺障害による損害までを算出し、それらに過失割合を乗じて損害賠償額を算定するのである。

 

このようにして提示された損害賠償額に対して被害者が納得して示談に応じることもあれば、様々な理由で示談が成立せず、結局裁判所に持ち込まれるケースもある。その場合、裁判所の和解案で和解する場合と、最終的に判決によって決着をつける場合とがある。

 

交通事故補償の流れはざっとこのようなものであるが、これらの各段階でそれぞれに大きな問題を抱えているのが、現在の我が国の交通事故補償の現状である。

本連載は、2015年12月22日刊行の書籍『ブラック・トライアングル[改訂版] 温存された大手損保、闇の構造』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ブラック・トライアングル[改訂版] 温存された大手損保、闇の構造

ブラック・トライアングル[改訂版] 温存された大手損保、闇の構造

谷 清司

幻冬舎メディアコンサルティング

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