「どこの国に何が売れるか」を考えるのが進出の第一歩
ひと口に海外進出といっても、製品やサービス、業界、進出先の国によって、その形態はさまざまです。
国内市場ですら、関東、関西、九州など、地域によって差があるのですから、海外の国による違いはさらに大きく、どの国に行くかで戦略も戦術も大きく異なってきます。ですから、海外進出の第一歩は、どこの国に何が売れるかを考えることから始まります。
では、どのようにして、それを知ることができるのでしょうか。当たり前のようですが、そのためには売るものと、売る場所についての深い理解が必要です。孫子も言っています。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」と。この場合は「彼」とは海外市場のことで、己とは自社の製品・サービスのことです。
「強み・弱み・機会・脅威」の4つを書き出す
ここで、海外進出できるかどうかの意思決定を行うために、私がいつもおすすめしているのが、SWOT分析です。
SWOT分析とは、自社の状況や業界の動向を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つのカテゴリーに分けて分析する、経営戦略策定方法です。
SWOT分析は、アメリカで1960年代に生まれたもので、MBAとか戦略コンサルティング・ファームで用いられるフレームワークとして日本でもだいぶ有名になりました。しかし、SWOT分析という名前を聞いたことがあるという人は多いのですが、やってみたことのある人は、意外と少ないものです。実際にやってみると、これほど簡単で実用的なフレームワークは他にありません。
ただし、横文字が苦手な人も多いので、私はSWOT分析という言葉は使わず、自社分析と呼ばせてもらっています。
SWOT分析のやり方は以下の通りです。
まず、S(強み)、W(弱み)、O(機会)、T(脅威)の4つを書き出します。このとき、S(強み)とW(弱み)を内部要因、O(機会)とT(脅威)を外部要因と呼びます。つまり、S(強み)とは自社の強み、W(弱み)とは自社の弱み、O(機会)とは、自社のチャンスになるような外部要因、T(脅威)とは自社を脅かすような外部要因のことです。
たとえば、キッコーマンであれば、次のような分析が考えられます。
S(自社の強み)
●国内しょうゆ市場では圧倒的なシェアとブランド
●醸造技術(キッコーマン菌)
W(自社の弱み)
●多角化の遅れ
●新商品開発力
O(自社のチャンスになるような外部要因)
●海外における和食文化拡大
●アジア諸国など新興国の経済成長
●健康食志向拡大
T(自社の脅威になるような外部要因)
●国内市場の先細り
●低価格化競争
●国内消費者の嗜好の多様化