国内の売上は頭打ち、生き残りをかけて海外進出を試みるも、成果を出せずに撤退…。そんな企業は少なくありません。本連載では、企業が海外市場で需要を見つけ出すためのマーケティング戦略について解説します。

売り込みの可能性を探る「アンゾフのマトリックス」

実際に、海外進出を行うときに、最初に考えねばならないのは何をどこに売るかです。

 

どのようにしたら、海外市場に売り込むことができるのか。どのようなものが海外で売れるのか。それは一概には言えません。このときに参考になるのが、ロシア生まれのアメリカの経営学者イゴール・アンゾフの提唱した「アンゾフのマトリックス」です。

 

[図表]アンゾフのマトリックスに見る海外進出の位置づけ

 

 

アンゾフのマトリックスでは、「市場」と「商品・サービス」を、「既存」と「新規」の二種類に分けて考えます。

 

つまり、既存商品を既存市場に売る場合(市場浸透)、既存商品を新規市場に売る場合(新市場開拓)、新規商品を既存市場に売る場合(新製品開発)、新規商品を新規市場に売る場合(多角化)の4つのフレームがあります。

 

既存市場を国内市場、新規市場を海外市場と読み替えることで、海外進出のケース・スタディができます。

日本市場の評価が高ければ、海外でのニーズも見込める

たとえば既存商品を新規市場(海外市場)に持っていくケースを考えてみましょう。

 

まず、日本市場でも非常に高く評価されるユニークな製品やサービスであれば、海外市場でもニーズを見つけることが、比較的簡単にできます。

 

たとえば、熱が出たときに額に貼る冷却ジェルシートは、日本で生まれた発明製品です。最初に製品化したのは1993年のダイヤ製薬ですが、1994年に小林製薬が「熱さまシート」として販売を開始してから、急速に市場に普及しました。

 

後にライオンも「冷えピタ」、久光製薬が「デコデコクール」などの商品名で追随しましたが、国内シェアの54%を小林製薬の「熱さまシート」が押さえています。小林製薬はこの「熱さまシート」を海外で販売して大成功をおさめました。日本にしかなかったために、海外でも大人気となり、年間1億6000万枚を売るようになったのです。現在では、海外売上比が52%と、国内売上を上回るほどに成長しています。

 

その経過は1996年に香港で販売開始して以来、マレーシア、シンガポール、アメリカ、フィリピン、台湾、イギリス、タイ、中国と順次海外市場を広げ、いまでは世界20カ国で販売するようになりました。

 

中国のメディアで「日本に行ったら買わねばならない12の医薬品」の一つに選ばれたこともあり、インバウンド需要でもよく売れています。

 

このように、日本発のユニークな製品、発明品の場合、海外にライバル製品がありませんから、地道な販売努力を続けて市場を切り拓くことが可能です。

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