他国による侵略、植民地化がなかったことが要因
第1回目の連載で、わが国には創業から100年以上の業歴をもつ老舗『100年企業』が約2万6000社存在すると書きました。さらに言いますと、創業から200年を超える企業も約2400社存続しています。
このように、100年、200年、あるいはそれ以上の長い伝統と歴史を有する企業が日本には数多く存続しており、それらの老舗企業数は世界一なのです。しかも、世界中の「100年企業」の数を全て足し合わせるよりも日本の老舗企業の数が上回っているそうです。
そのように100年企業が数多く存続できた最大の理由として、日本が外国による侵略や植民地化されたことがないという歴史的な背景があげられています。
歴史上、外国に侵略されたり植民地として他民族の支配を受けた国では、その国古来からの事業者は外的要因によって消滅させられてしまい、諸外国では長い歴史を有する企業がほとんど残されていません。その点、日本は他国の侵略を受けたことも植民地として支配されたこともなく、太平洋戦争の敗戦後もGHQの統制は受けたものの基本的な自治は認められていたため、多くの企業が今日まで存続することが出来ました。
今は「家督相続」ではなく、「均分相続」の時代に
そして、もう一つ忘れてならないのは、わが国が「家督相続」の国だったことです。「先祖代々の家業を、長男が家督相続する。その他の兄弟姉妹は一族をあげて家業を守り存続するために協力する。」そのような家督相続の制度があったことで、100年はおろか300年、500年、1000年という気の遠くなるような長きにわたり伝統を守ってきたのです。
しかし、先ほど述べたGHQ支配下時代、基本的な自治は認められていた一方で「民法」は大改正され、家督相続は廃止されて「均分相続」の制度が導入されました。一説によると、家督相続では家を継げるのは長男だけであり、継ぐべき家がない次男・三男などが兵隊として駆り出されて「カミカゼ特攻隊」のような死を恐れぬ戦争の先兵となったことから、その家督相続制度を消滅させれば将来の日本は戦争をしない国になるであろうとの見込みから廃止させられた、とも言われています。
ことの真相はどうであれ、戦後の新民法の下で均分相続が定着したことで、古来から続いてきた「家督相続的な」事業承継は困難となりました。そのため、遺留分や代償分割など、兄弟姉妹間の公平・平等に配慮した相続対策・事業承継対策が必要になったのです。