円建てと違い、米ドル建ては10年目で投資額回収が可能
これまでの連載で、一時払の終身保険については、すべて円建ての商品を見てきました。しかし、マイナス金利等の影響によって、「売り止め」や「販売中止」が2016年に激増しました。
そこで販売額が増えたのが、外貨建ての一時払終身保険です。以下の図表1の上の図は、60歳男性が1米ドル=100円のときに、米ドル建ての一時払終身保険に1000万円の保険料を支払ったイメージです。
レバレッジ倍率が初年度から1.52倍となっており、円建ての1.13倍と比較すると、かなり大きな差が見て取れます。
また、資産運用効果の観点から見てみると、円建てでは10年目での投資額の全額回収は不可能でしたが、米ドル建てでは10年目で103%の解約返戻率です。20年目ともなると、円建てが106%だったのに対し、米ドル建ては125%まで上昇しています。
ただし以下の図表1、87歳の男性のケースを見ると、レバレッジ倍率は1.02倍に留まり、円建ての1.01倍とほぼ変わりません。解約返戻率については、10年目で97%となり、円建ての98%を下回ることになります。
いくら米ドル建てといえども、年齢が上がれば上がるほどメリットが受けられなくなるということです。その代わり、年齢が若ければ若いほど米ドル建ての効果は絶大といえます。
[図表1]米ドル建てで一時払終身保険を活用した場合のイメージ(男性)
米ドル建てである以上、「為替変動リスク」には要注意
次に、女性を見てみましょう。以下の図表2の上の図は、60歳女性のイメージです。レバレッジ倍率は初年度から1.74倍という高さで固定されています。
円建てのレバレッジ倍率は1.18倍でしたから、その差はかなり大きなものです。男性よりも女性のほうが、米ドル建てではより高いレバレッジ倍率を得ることができます。解約返戻率を見ても、10年目の円建ての96%に比べて米ドル建てが103%、20年目では円建ての106%に比べて米ドル建ては125%とかなり高くなっています。
図表2の下の図は80歳女性のケースですが、レバレッジ倍率は1.07倍となっていて、円建てよりも少し上がっています。また、解約返戻率を見ても10年目の時点では100%を超えるので、高齢になっても米ドル建ての効果が表れています。
[図表2]米ドル建てで一時払終身保険を活用した場合のイメージ(女性)
また、毎年逓増型のタイプにも、米ドル建ての商品があります。それが以下の図表3です。こちらもまた全年齢、男女共通での設計となっています。
レバレッジ倍率を見ると、1年目は1.0083倍とそれほど高いものではありませんが、長生きすればするほど上がっていきます。解約返戻率は10年目で108%と、投資額の全額回収が見込めるので、資産運用の効果を優先したい場合には利用価値があると考えられます。ただし、米ドル建てですので、為替変動リスクがあることは言うまでもありません。
[図表3]全年齢・男女共通の米ドル建て毎年逓増型を活用した場合のイメージ