租税条約と国内法の適用関係
日本では、日本国憲法第98条第2項により、締結した条約や確立された国際法規を誠実に遵守することが求められています。租税条約は、国内法とあわせて適用関係を確認する必要があり、条約によって国内法上の課税が制限される場合があります。
一方、米国では、米国憲法第6条第2節により、条約と連邦法はいずれも国の最高法規とされています。条約と連邦法が抵触する場合には、一般に後に制定された法令が優先するという考え方が適用されることがあります。
実際、旧日米租税条約の下では、米国はこの後法優先の考え方に基づいてFIRPTAを適用し、不動産保有法人の株式の譲渡にも課税していました。これに対し、日本は条約に従って免税としていたため、両国の取扱いに食い違いが生じていました。
現行の日米租税条約では不動産保有法人の株式にも着目
この不均衡を是正するため、日米租税条約は2003年に全面改正され(2004年発効)、不動産を保有する法人の株式の譲渡についても、不動産所在地国の課税権を確保する規定が設けられました。第13条2項(a)では、資産の価値の50%以上が不動産で構成される法人の株式その他同等の権利の譲渡益について、不動産所在地国が課税できるとされています。ただし、上場株式で、相手国居住者と特殊関係者の持株が5%以下の場合などは対象外とされています。
その後、2019年に発効した改正議定書では、第13条のうち米国不動産保有法人の株式に関する定義が、米国内国法の「米国不動産持分」の定義に合わせられました。
このような規定は、不動産を直接売却する代わりに法人の株式を売却することで、不動産所在地国の課税を回避する取引に対応するうえで重要です。
日本の国内法でも、一定の不動産関連法人の株式、いわゆる不動産化体株式などの譲渡について課税関係が整備されています。不動産関連法人とは、国内にある不動産等の価額が資産総額の50%以上を占める法人をいいます。ただし、実際に課税されるかどうかは、株式の保有割合、譲渡者の属性、適用される租税条約などによって異なります。
国際的な不動産取引では、不動産そのものを売却する場合だけでなく、不動産を保有する法人の株式を売却する場合についても、課税関係を確認する必要があります。
