東京の都心部ではマンション価格の高騰が続き、10億円を超える物件に加え、100億円を超える物件も登場しています。こうした高額不動産を外国人投資家が売却して利益を得た場合、日本で税金は課されるのでしょうか。実は、かつての日米租税条約の下では、日本国内の不動産を保有する法人の株式を売却することで、日本での課税を回避できる余地がありました。米国の外国人不動産投資税法(FIRPTA)や日米租税条約の改正をたどりながら、非居住者による不動産譲渡益の課税関係と、今後の制度上の課題を解説します。
旧日米租税条約と株式譲渡益の課税
1972年に発効した旧日米租税条約では、不動産の譲渡益は不動産の所在地国で課税できる一方、株式の譲渡益は譲渡者の居住地国のみで課税するとされていました。そのため、米国居住者が日本の不動産を保有する法人の株式を売却した場合、日本では課税されない扱いとなっていました。
例えば、日本国内の不動産を直接売却するのではなく、その不動産を保有する法人の株式を売却すれば、形式上は不動産の譲渡ではなく、株式の譲渡となります。旧条約の下では、不動産を直接売却する場合は日本で課税され、法人株式を売却する場合は課税されないという不均衡が生じていました。
旧条約の下でどのような取引が免税となったかは、株式の種類や譲渡者の居住地、適用される条約の条文などによって異なります。すべての日本株式の譲渡益が一律に免税となっていたわけではありません。
こうした問題は、日本だけでなく、米国でも外国人による不動産投資をめぐる課税制度を考えるうえで重要な論点となりました。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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