米国では「不法滞在者」でも所得の申告義務がある
ここで、米国の税制について重要な点を確認しておく必要があります。米国では、移民としての在留資格にかかわらず、米国内で得た所得については、原則として米国で申告・納税する義務があります。
そのため、Social Security Number(社会保障番号)を持っていない人でも、Individual Taxpayer Identification Number(ITIN=個人納税者番号)を取得して、所得を申告することができます。
ITIN制度が始まったのは1996年です。もちろん、ITINを取得している人がすべて不法移民というわけではありません。
例えば、日本人にも多いケースですが、米国で不動産投資を行い、賃貸収入を得ている場合があります。米国に居住していない日本人であっても、米国内で得た不動産所得について申告するために、ITINを取得しているケースがあります。
National Taxpayer Advocateによると、2024年には約380万人がITINを利用して申告を行い、144億ドルもの所得税を納税したとされています。つまり、米国の税制では、在留資格や市民権の問題と、米国内で得た所得に対する納税義務は、必ずしも同じ問題として扱われてきたわけではありません。
米国の確定申告書は「質問」が多い
そもそも米国の確定申告書には、単純に納税額を計算するためだけではなく、さまざまな質問が設けられています。
例えば、海外に資産を保有しているか、暗号資産を取得したか、売買したか、といった事項です。こうした質問のなかには、直接的に税額の計算に影響しないものもあります。しかし、これらを単なる「アンケート」と考えてはいけません。
私はこれを一種の「引っ掛け問題」と考えています。質問に対して虚偽の回答をしたり、本来申告すべき所得や資産を申告しなかったり、必要なフォームを提出しなかったりすれば、日本では考えられないほど多額のペナルティが課される場合があります。さらに、悪質なケースでは刑事罰につながる可能性もあります。
今回の市民権や就労資格に関する質問も、こうした米国の確定申告書の特徴の延長線上にあると考えると分かりやすいでしょう。そして、トランプ政権による不法滞在者の取り締まり強化という政策と重ね合わせてみれば、今回の改正案が持つ意味も見えてきます。
