「もう全部売ってしまいたい」3つの不動産に追われる毎日
さらに頭を悩ませたのが、母の自宅と駐車場跡地でした。
実家は母が亡くなってから空き家になっています。庭木の手入れや室内の換気のため、由紀子さんは片道2時間近くかけて通っていました。
「誰も住んでいない家なのに、固定資産税もかかるし、草も伸びる。台風の後は屋根が心配で見に行かなきゃいけないんです」
売却を考えて不動産会社に相談したところ、建物の老朽化を指摘されました。土地には一定の需要があるものの、希望価格で売るには時間がかかる可能性があるといいます。
一方、駐車場跡地は周辺に新しい駐車場が増え、以前のような収入を見込めなくなっていました。接道条件などもあり、売却先は簡単には見つかりません。
総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高でした。このうち、賃貸・売却用や別荘などを除く空き家は約385万戸に上ります。
由紀子さんも、実家をそのまま残すことの負担を実感していました。
相続から2年ほど経ったころ、夫にこうこぼしたといいます。
「もう全部売ってしまいたい。管理するだけで疲れちゃった」
しかし、賃貸アパートは修繕を終えたばかり。売却するなら入居状況や建物の状態を踏まえて価格を検討する必要があります。
実家についても、解体費用をかけて更地にするべきか、建物付きで売り出すべきか判断がつきません。
「1億7,000万円の資産があると聞けば、余裕があると思われますよね。でも、すぐ使えるお金が1億7,000万円あるわけじゃないんです」
現在、由紀子さんは実家の売却を進めながら、賃貸アパートについても管理会社と今後の修繕計画を相談しています。駐車場跡地は売却希望価格を見直しました。
相続した不動産をすべて手放すと決めたわけではありませんが、所有し続けるために必要な費用を具体的に計算するようになったそうです。
なお、相続放棄をする場合は、原則として自分が相続人になったことを知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。また、特定の不動産だけを選んで放棄することはできません。判断に時間が必要な場合は、期間の伸長を申し立てる制度もあります。
「母が残してくれたものだから、できれば大事にしたかった。でも、自分が70代になっても管理できるかと考えると、今のうちに整理したいんです」
不動産を相続する際には、評価額や家賃収入だけでなく、固定資産税、修繕費、管理の手間、将来の売却可能性なども確認する必要があります。所有者が高齢になれば、遠方の物件を管理する負担も大きくなりがちです。親が元気なうちから不動産の利用状況や維持費を把握し、引き継いだ後の管理方法まで話し合っておくことが、相続後の判断を助けるでしょう。
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