遺品整理で見つけたもう一つの口座
葬儀を終え、美紀さんが実家を整理していたときです。母が通帳などを保管していた引き出しの奥から、見覚えのない一冊が出てきました。
残高は約70万円。履歴を見ると、数年前から毎月5,000円、余裕のある月には1万円ほどが入金されています。
美紀さんは最初、何のお金なのか分かりませんでした。
ところが、母が普段使っていた口座と照らし合わせると、美紀さんから3万円が振り込まれた数日後に、そこから一定額を移している月がいくつもありました。
「これ、私が送っていたお金だ」
仕送りをすべてそのまま残していたわけではありません。
残りは食費や光熱費、通院費、家電の買い替えなどに使われていました。母にとって仕送りは確かに生活を支えるお金だったのです。それでも和子さんは、その一部を少しずつ残していました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯では、実収入が月13万1,456円、可処分所得が11万8,465円に対し、消費支出は14万8,445円。平均的な家計でも、収入だけで毎月の支出を賄えているわけではありません。
また、厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』では、65歳以上の人がいる世帯のうち単独世帯は32.7%。65歳以上だけで構成される世帯は62.3%を占めています。
美紀さんは通帳を見ながら、「もっと使ってくれればよかったのに」と思う一方、母が残したかった気持ちも分かるような気がしたといいます。
「3万円を送っていたから安心していました。でも、何にいくら必要なのか、ちゃんと聞いたことはなかったんですよね」
母が残した預貯金は、この70万円を含めて約300万円でした。相続手続きを終えたあと、美紀さんは受け取ったお金を自分の口座に入れています。
「母に『自分のために使いなさい』と言われたので、少しはそうしようと思っています」
高齢になるにつれて医療費や住まいの維持費など、必要な支出も変化します。一方、親自身が将来への不安から、受け取ったお金をすべて使わず残すこともあるでしょう。定期的に生活費や預貯金の状況を確認しておくことは、親が必要以上に生活を切り詰めていないかを知る機会にもなります。
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