「毎日3食作る生活は無理」妻が定年前から考えていたこと
裕子さんは週3日、パートで働いていました。
正志さんが会社へ行っていたころ、平日の昼食は自分一人。仕事がない日は買い物をしたり、友人と会ったりして過ごしていました。
ところが正志さんは、退職後について「朝はゆっくりして、昼は家で食べて、夕方になったら晩酌」と話していました。
「毎日3食作る生活になるのかなって思ったら、それは無理だと思ったの」
正志さんには、その発想がありませんでした。
さらに裕子さんが気にしていたのは家計です。
2,000万円の退職金が入ったことで、正志さんは「旅行くらい好きに行けるだろう」と考えていました。しかし夫婦の公的年金がそろって支給されるまでには時間があります。住宅ローンはなくても、今後は自宅の修繕も必要です。
なお、現在は60歳で仕事を終える人ばかりではありません。厚生労働省『令和7年高年齢者雇用状況等報告』によると、従業員21人以上の企業の99.9%が65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施しています。その内訳は「継続雇用制度の導入」が65.1%、「定年の引上げ」が31.0%、「定年制の廃止」が3.9%でした。
正志さんは妻の提案をすべてそのまま受け入れたわけではありません。
話し合った結果、昼食は原則それぞれで用意。夕食は裕子さんが作る日、正志さんが担当する日、各自で済ませる日を設けました。
掃除とゴミ出しは正志さんが担当します。
そしてもう一つ、2人が残したのが「お互いの予定を細かく確認しない」という項目です。
「今日どこ行くの? 何時に帰るの?って毎回聞かれる生活にはしたくない」
定年から数ヵ月。正志さんは週2回ほどジムへ通い、以前の同僚とも出かけるようになりました。再雇用についても、もう少し休んでから検討するつもりだといいます。
あの封筒は今も自宅の引き出しに残っています。
定年は仕事から離れる本人にとって大きな節目ですが、同じ家で暮らす家族の日常も変わります。退職金や年金といったお金の確認に加え、家事を誰が担うのか、それぞれが一人で過ごす時間をどう確保するのか。退職後の生活が始まる前に具体的な日常まで話しておけば、夫婦の一方だけに負担が偏ることを避けるきっかけになるでしょう。
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