「心配していただけなのに」娘から初めて聞いた本音
「私、何か悪いことした?」
芳江さんは混乱し、美香さんへ電話をかけました。しかし出てもらえません。
そこで、さらに連絡するのはやめました。4日後、美香さんのほうから電話がありました。
「お母さんのことが嫌いになったわけじゃない。でも、毎日返事を求められるのがしんどかった」
美香さんはそう話したといいます。
仕事中にも連絡が届き、返せなければメッセージが重なる。休日の予定を話せば、娘の受験や帰宅時間について意見を言われる。
「何を話しても最後に何か言われるから、だんだん予定を話したくなくなった」
その言葉に、芳江さんは初めて、自分の連絡を娘がどう受け取っていたのかを知りました。
「心配していただけだったんだけどね」
そう答えると、美香さんから「心配されるのが嫌なんじゃなくて、毎日確認されるのがつらかった」と言われました。
2人はしばらく毎日の連絡をやめることにしました。
その後、芳江さんは近所の知人に誘われ、週1回の体操教室へ通い始めます。以前から参加を勧められていたものの、「知らない人ばかりだから」と断っていた場所でした。
内閣府の同調査では、65歳以上で親しくしている友人・仲間が「たくさんいる」「普通にいる」「少しいる」と答えた人は合計82.7%。一方、「ほとんどいない」は12.6%、「全くいない」は3.5%でした。
体操教室へ行くようになったからといって、娘への思いが薄れたわけではありません。ただ、買い物のついでに知人とお茶をしたり、教室で翌週の予定を話したりする時間が増え、娘に「今日あったこと」をすべて伝えることはなくなりました。
数ヵ月後、美香さんとは週に1~2回ほど連絡をするようになりました。
ある日、美香さんから「今度の日曜、そっち行こうか?」とメッセージが届いたとき、芳江さんはすぐに長い返信を書きかけ、途中で消したそうです。
送り直したのは、「うれしい。待ってるね」の一言でした。
家族との連絡は、高齢期の安心や日々の楽しみになることがあります。一方、特定の家族とのやり取りが生活の中心になると、返信の遅れや連絡頻度の違いが大きな不安につながる場合もあります。相手の生活時間を尊重しながら、家族以外にも会話や外出の機会を持つことは、双方が無理なく関係を続けていくうえで一つの支えになるでしょう。
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