「返事くらいできるでしょう?」娘に毎日送っていたメッセージ
「もう連絡しないで。しばらく放っておいてほしい」
そのメッセージを何度も読み返したというのは、一人暮らしの芳江さん(75歳・仮名)です。
夫を7年前に亡くし、現在は年金月約14万円で生活しています。住宅ローンを完済したマンションに住み、近所には顔を合わせれば話をする知人もいました。
一人娘の美香さん(48歳・仮名)は、電車で1時間ほど離れた場所で夫と高校生の娘と暮らしています。芳江さんにとって、美香さんとの連絡は毎日の習慣でした。
「今日は寒いね」「スーパーでイチゴが安かったよ」
最初はそんな短いメッセージを1日1回送る程度。美香さんも仕事の合間に「こっちも寒いよ」「よかったね」と返していました。
ところが夫を亡くして数年が経ち、芳江さんが外出する機会が減るにつれ、連絡の回数は少しずつ増えていきます。
朝に「おはよう」、昼には昼食の写真。夕方になって返事がなければ、「忙しいの?」「何かあった?」と続けて送りました。既読がついても返信がないと、電話をかけることもあります。
ある日、美香さんから「仕事中は返せないから、何通も送らなくて大丈夫だよ」と言われました。芳江さんも「分かった」と答えましたが、数日後には元に戻っていました。
「返事を催促しているつもりはなかったんです。ただ、既読になったのに何も来ないと、どうしたのかなって気になって」
さらに、美香さんから週末に家族で出かけると聞けば、「受験生がいるのに大丈夫?」。帰宅が遅かったと知れば、「そんな時間まで娘を連れ回すの?」と口を挟むことも増えました。
美香さんから「うちのことは大丈夫だから」と言われても、芳江さんには娘を気遣っているという感覚しかありませんでした。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』では、65歳以上の72.5%が電話やメール、SNSなどを含めて「毎日」誰かと話すと回答しています。一方、「1週間に1回未満・ほとんど話をしない」は6.0%。一人暮らしの人に限ると14.7%でした。
芳江さんにとって娘との連絡は、いつの間にか日々の生活の大きな部分を占めるようになっていたのです。
そんなある晩、芳江さんはいつものようにメッセージを送りました。数時間たっても返信がなく、続けて3通。その後、電話もかけました。
翌朝届いたのが、「もう連絡しないで」というメッセージでした。
