(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが独立して夫婦2人になっても、長年暮らした家をそのまま使い続ける家庭は珍しくありません。思い出があり、住宅ローンも終わっていれば、あえて住み替える理由を感じないこともあるでしょう。しかし、家族構成が変われば、必要な住まいの広さも変わっていきます。

5LDKから2LDKへ…引っ越して初めて分かったこと

夫婦が探したのは、同じ市内の2LDKの中古マンションでした。

 

条件は、駅とスーパーまで徒歩10分以内。エレベーターがあり、室内の段差が少ないことです。

 

国土交通省『令和5年住生活総合調査』では、今後住み替える意向がある65歳以上の夫婦世帯は、住宅の条件として「高齢者への配慮(段差がない等)」を比較的重視し、周辺環境では「日常の買物などの利便」を重視する傾向が示されています。

 

問題は、5LDKから2LDKへ持っていける物が限られることでした。

 

夫婦は半年ほどかけて家の中を整理しました。子どもたちには、自分の荷物を確認してもらいます。

 

長男は段ボール2箱分だけを持ち帰り、残りは「もういらない」。長女も、取っておいてほしいと言ったのはアルバムなどわずかでした。

 

「15年も大事に取っていたのに、本人たちは忘れていたんですよ」

 

明美さんは笑います。

 

食器棚からは、何年も使っていない来客用の食器が出てきました。押し入れには予備の布団が何組もあります。

 

和夫さん自身も、現役時代のスーツを何着も残していました。売るもの、譲るもの、処分するものに分け、最終的に家財を大幅に減らしました。

 

戸建てを売却し、2LDKのマンションへ移った直後、和夫さんには少し不安もあったそうです。

 

「5LDKからですから、さすがに窮屈になると思っていました」

 

ところが、実際に生活を始めると印象は違いました。夫婦の寝室と、もう一部屋。LDKで食事をし、テレビを見ます。考えてみれば、以前の家でも夫婦が普段使っていた場所はLDKと寝室が中心でした。

 

「狭くなったというより、使っていない場所がなくなった感じなんです」

 

掃除は短時間で終わり、庭の手入れもありません。

 

明美さんが意外だったのは、外出が増えたことでした。

 

「前は天気がいいと『庭をやらなきゃ』と思っていたんです。今は午前中に掃除が終わるから、そのまま2人で出かけることがあります」

 

住み替えには、売却や購入に伴う費用がかかります。さらにマンションであれば管理費や修繕積立金など、戸建てとは異なる継続的な支出もあります。そのため、家が広すぎるという理由だけで住み替えがすべての世帯に適しているわけではありません。

 

実際、国土交通省『令和5年住生活総合調査』では、65歳以上の世帯が最近5年間に住み替えた理由として、「高齢期の住みやすさ」が特徴的にみられます。住み替え先を考える際には、単純な広さだけでなく、これからの暮らしやすさを含めて検討することが重要です。

 

和夫さん夫婦にとっても、5LDKで暮らした時間が無駄だったわけではありません。

 

子どもたちがいたころには必要だった広さです。ただ、家族の人数が変わったあとまで、同じ広さが必要とは限りませんでした。

 

住まいを考える基準は、広いか狭いかだけではありません。今、実際にどの部屋を使っているのか。維持するためにどれだけの費用や手間がかかっているのか。そして、これからの生活で何を優先したいのか。家族構成や年齢が変わったとき、一度整理してみることも住まいを考えるきっかけになるでしょう。

 

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