「来るなら空けておく」から「予定が合えば会おう」へ
紀子さんが気になったのは、旅行を一度逃したことだけではありませんでした。振り返ってみると、同じようなことが何度もあったのです。
隆夫さんも、以前は友人と出かけていたゴルフを「孫が来るかもしれない」と断ったことがありました。紀子さんも、連休や夏休みには予定をなるべく入れないようにしていました。
「娘から毎回『空けておいて』と言われたわけじゃないんです。私たちがそうしていただけなんですよね」
孫が幼かったころは、それでも予定が合いました。しかし、成長すれば学校や習い事、友人との約束が増えていきます。
夫婦は長女に不満を伝えるのではなく、自分たちの予定の立て方を変えることにしました。
数ヵ月後、秋の連休を前に長女から連絡がありました。
「どこかの日に、そっちに行こうかと思ってるんだけど」
紀子さんはカレンダーを見ました。夫婦はすでに1泊旅行を予約しています。以前なら日程を変更できないか考えていたでしょう。しかしこのときは、
「その日は私たちも出かけるから、別の日なら大丈夫よ」
と答えました。長女から返ってきたのは、「じゃあ翌週にしよう」という、ごく普通の返事でした。
「拍子抜けしました。私たちが予定を変えなければいけないと思い込んでいただけだったんです」
今でも誕生日にはプレゼントを贈り、一緒に出かけることもあります。変えたのは、その順番でした。
友人から誘われれば、自分たちが行きたいかどうかで決める。夫婦で行きたい場所があれば先に予定を入れる。そして、孫とはお互いの都合が合う日に会うようにしました。
「この前、孫から『今度いつ空いてる?』と聞かれたんです。前は私たちがいつでも空いている前提だったのかもしれませんね」
孫と過ごせる時間には限りがあり、成長に伴って会う頻度や過ごし方が変わることもあります。
家族との時間を大切にすることと、自分たちの予定を持つことは両立できます。誰かの予定が入るかもしれないと待つのではなく、お互いの都合を確認して会う。家族それぞれの生活が変化していくなかでは、そんな関係へ少しずつ切り替えていくことも必要なのかもしれません。
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