【司法書士が解説】相続トラブルを避けるために…遺言書に必須の「予備的条項」
まず、ヨシコさんが直面した「預金の解約トラブル」についてです。結論から言えば、ヨシコさんは遺言執行者を新たに選任する必要はありません。
遺言書の内容をよく確認すると、預貯金については「相続させる」という文言になっていました。遺贈ではなく特定の財産を「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)であれば、遺言執行者がいなくても相続人であるヨシコさんが単独で解約手続きを行うことが可能です(※)。
※民法第1012条第2項等の解釈に基づく
ヨシコさんは銀行側へその法的な根拠をしっかりと説明した結果、無事に新たな遺言執行者を選任することなく解約に応じてもらうことができました。
次に、田畑の遺産分割協議が発生してしまった点についてです。今回の事例において、夫のマサキさんはどのように遺言を作成すべきだったのでしょうか。
財産を受け取るはずだった弟が自分より先に亡くなる事態に備え、「もし弟が死亡していた場合は、別の者に遺贈する」といった受遺者や遺言執行者を別に指定する「予備的条項」を付記しておくべきでした。また、預金の解約トラブルについても、事前の対策が不十分であったことが原因です。
遺言の作成は、可能な限りご自身が心身ともに元気で、時間的な余裕がある時に行うべきです。そして、今回のような想定外の事態にもしっかりと備えられる内容にするためには、ご自身で直接公証役場へ相談して作成をお願いするのではなく、遺言作成の実務経験が豊富な専門家に事前に相談することが重要です。
第三者を交えて内容を吟味し、あらゆるケースを想定しておくことが、遺された家族の苦労を防ぐ確実な方法と言えます。
新井 健二
新井司法書士事務所
司法書士/ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
※プライバシー保護の観点から、実際の相談者および相談内容を一部変更しています。
