「今年もやらなきゃね」少しずつ負担になった戸建ての手入れ
「庭付きの家が欲しくて買ったんです。まさか、その庭を持て余す日が来るとは思いませんでした」
そう話すのは、73歳の和夫さん(仮名)です。同い年の妻・恵美子さん(仮名)と2人で暮らしています。
夫婦が戸建てを購入したのは30代半ばのころ。子ども2人を育て、約38年間暮らしてきました。
住宅ローンはすでに完済。現在の年金収入は夫婦で月約33万円です。
敷地には小さな庭があり、子どもが幼かったころには夏にビニールプールを出したり、家族でバーベキューをしたりしていました。
恵美子さんは花を育てるのが好きで、和夫さんも休日には庭木を剪定します。
「昔は庭に出るのが趣味みたいなものだったんですよ。土曜日の朝から草を取っていても、嫌だと思ったことはなかったですね」
ところが、70歳を過ぎるころから事情が変わってきました。
春から夏にかけては、雑草を抜いても数週間後にはまた伸びています。しゃがんだ姿勢で作業を続けると腰がつらくなり、高い場所の枝を切るのも不安を感じるようになりました。
ある年の初夏、和夫さんが朝から草むしりをしていると、恵美子さんが声をかけました。
「今日は出かけるって言ってなかった?」
夫婦はその日、少し離れた街までランチに行くつもりでした。
「これだけ終わらせてから行こう」
そう答えたものの、作業が終わったころには昼近く。汗だくになった和夫さんは疲れてしまい、結局、外出は翌週に延期しました。
似たようなことは、その後もありました。落ち葉を集める。雨どいを確認する。庭木が伸びれば剪定する。自分たちでできない作業は業者へ依頼します。
そして気になっていたのは庭だけではありません。築年数が進み、外壁や屋根、給湯器など、これから修繕や交換が必要になりそうな箇所も増えていました。
「壊れたら直せばいいと思っていたんです。でも、次はどこだろうと考えるようになって。家を持っているというより、家を維持することが一つの仕事みたいになってきたんですよね」
国土交通省『令和5年住生活総合調査』では、今後の住み替え意向がある65歳以上の夫婦世帯が住宅の質について重視する項目として、「高齢者への配慮(段差がない等)」が持ち家で22.4%と最も高く、「広さや間取り」が17.1%などとなっています。また、高齢者世帯では住み替えの理由として「高齢期の住みやすさ」が比較的多く挙げられています。
その年の秋、恵美子さんが何気なく言いました。
「この家、私たち2人にはもう広すぎるのかもしれないね」
