妻がいなくなってから、家族の集まりへ行く回数が激減
「妻がいたころは、息子の家へ行くのも何とも思わなかったんです」
そう話すのは、73歳の正雄さん(仮名)です。
3年前に妻を亡くし、現在は一人暮らし。年金収入は月約16万円です。住宅ローンはなく、長年住んできた戸建てで生活しています。
45歳の長男・浩介さん(仮名)は、妻と小学5年生の娘との3人暮らし。正雄さんの家から車で40分ほどの場所に住んでいます。
妻が元気だったころは、長男一家と頻繁に会っていました。
孫の誕生日には夫婦そろって長男宅へ行き、クリスマスにはプレゼントを持っていく。正月には長男一家が実家へ来るのが恒例でした。
その関係が少し変わったのは、妻が亡くなってからです。
長男一家との関係が悪くなったわけではありません。浩介さんから「今度ご飯でも食べよう」と誘われることもあり、孫から電話が来ることもあります。
ただ、正雄さん自身が誘いを断ることが増えました。
「3人で出かけるところに私が入ったら、邪魔かなと思うようになったんです。妻がいれば、こちらも夫婦だから何とも思わなかったんですけどね」
ある年の連休には、長男から日帰り旅行に誘われました。正雄さんは「お前たちだけで行ってきな」と断りました。
孫の学校行事について聞いても、自分から「見に行っていい?」とは尋ねません。長男一家の予定を邪魔したくない。そのつもりだったといいます。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしは増加しており、2020年時点で65歳以上人口に占める割合は男性15.0%、女性22.1%でした。2050年には男性26.1%、女性29.3%になると推計されています。
正雄さんも、一人暮らしそのものには慣れてきました。
料理は簡単なものなら作ります。近所に知人もいて、週に一度は囲碁の集まりへ出かけています。
それでも、家族に関しては以前より受け身になっていました。
そんななか、孫が11歳の誕生日を迎える少し前のことです。正雄さんはプレゼントとして図書カードを用意しました。
「今度、渡しに行くよ」
電話でそう伝えると、長男から返ってきたのは意外な言葉でした。
「何言ってるの。土曜日、誕生日会やるから来るでしょ?」
