「そりゃ息子も寄り付かないわ」〈年金月14万円・金融資産1億円超〉75歳母、お祝い100万円を突き返され…3人目の孫が生まれた43歳長男と〈実質絶縁〉の納得の理由【FPが解説】

小川洋平
「そりゃ息子も寄り付かないわ」〈年金月14万円・金融資産1億円超〉75歳母、お祝い100万円を突き返され…3人目の孫が生まれた43歳長男と〈実質絶縁〉の納得の理由【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもや孫を思い、よかれと思っての経済的支援。しかし、そこに言葉の端々で子どもの生活を否定するような態度が混ざってしまうと、どんなにありがたい援助であっても「有難迷惑」や「コントロールの手段」と受け取られてしまいがちです。本記事では、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が、田村和子さん(仮名)の事例から、親子間のお金と適度な距離感について解説します。

「二度と来ないでくれ」突き返された祝儀袋

「もういい加減にしてくれ! 俺たちは俺たちなりに考えてやってるんだよ」と健太さんが怒鳴りました。美咲さんが慌ててあいだに入りますが、健太さんの怒りは収まりません。

 

親子間の言い争いはヒートアップし、「もう帰ってくれ。二度と来ないでくれ」と健太さんは和子さん夫婦を部屋から追い出し、先ほど受け取った祝儀袋を突き返したのです。

 

帰宅した和子さんのもとへ、健太さんからLINEが届きます。そこには「もう家には来ないでほしいし、俺たちも実家には行かない」といった内容が綴られていたそうです。

 

後日、和子さんは長年の顧客であり友人である50代の女性にこの話を打ち明けました。

 

「狭い市営住宅で苦労するより、もっと広い家で孫たちを育ててほしい。そんな思いから出た言葉だったのに……」

 

和子さん夫婦は、子どもたちのために相続対策も進め、所有する2棟のアパートも、将来は2人の子どもに引き継がせるつもりで購入したものです。税負担にも配慮しながら、専門家と相談して準備を進めていました。

 

「こんなに子どもたちのことを考えているのに、どうして……」

 

相談した女性は「そりゃ息子も寄り付かないわよ」と返しましたが、和子さんは理解できず、孫たちとも会うことができなくなってしまったのでした。

資産の額では埋められない親子間の溝

今回の事例において、和子さんの過干渉が引き金となったのは確かです。

 

健太さん夫婦の経済状況が厳しいのは事実ですが、彼らは自分たちで仕事を選び、限られた収入のなかでやりくりしながら、家庭を築いています。子どもが3人に増えれば、教育費などの負担も増し、家計や事業の見直しが必要になる局面も訪れる可能性もあります。

 

だからといって、親が自分の価値観だけで「その仕事は儲からない」「家業を継げばよかった」と決めつけてよいわけではないでしょう。和子さんは健太さん夫婦の事業出資者でもなければ、依頼を受けた経営コンサルタントでもありません。

 

サロンの経営をどうするかは、まず健太さん夫婦が決めることです。仮に、健太さん側から「どうすれば売上を増やせるだろう」と相談されたのであれば、長年の事業経験をもとに助言することもできるでしょう。しかし、求められていない段階で、本人たちの仕事や暮らしを否定するような言葉を重ねれば、反発を招くのは当然といえます。特に今回は、長男が家業を継がなかったことへの不満が、長年にわたって親子間に残っていた点も影響していると考えられます。

 

出産祝いの100万円自体は、孫の誕生を喜ぶ気持ちから用意したものでしょうし、資金繰りに苦しむ健太さん夫婦にとっても正直喉から手が出るほど有難いお金だったはずです。それでも突き返した背景には、自分たちの生き方や自立心を否定されたことへの強い拒絶反応の表れでしょう。

 

総務省「家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の毎月の実収入は平均25万4,395円。また、内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、金融資産の総額は平均1,769万円です。

 

一方で、和子さん夫婦は年金と事業収入を合わせると月100万円近い収入があり、金融資産は1億円と大幅に平均値を超えています。上位層に位置する非常に恵まれた老後を送っているといえるでしょう。自分たちの成功体験があるからこそ、「自分たちと同じようにすれば、もっと豊かになれるのに」と考えてしまうのかもしれません。

 

しかし、親にとっての成功が、子どもにとっても望ましい人生とは限らないのです。健太さん夫婦は、贅沢ができなくても、自分たちで選択した事業を育てながら、家族で暮らしていく生活を望んでいます。事業が軌道に乗るまで苦労することもあるでしょうが、その過程で、売上の増やし方や経費の管理、家計とのバランスを学んでいくことも、長い目で見れば経営者としての大事な感覚を身に着ける経験になります。

 

本人たちの意向を尊重し、必要なときに相談できる距離感を保っておくことが、良好な親子関係を維持しながら関わることができる関係ではないでしょうか。

お金で買えない家族の信頼関係

子どもが何歳になっても、親にとっては心配な存在でしょう。「苦労しているなら少しでも助けてあげたい」という親心自体は自然なものですが、よかれと思った行動が子どもにとって有難迷惑になってしまうことはよくある話です。

 

特に、子どもが経済的に独立して自分の人生を歩んでいるのであれば、親は一歩引いて見守る姿勢が求められます。仮に資金支援を求められた場合でも、老後資金の範囲内で資金の目的や返済の有無、受け取る側の意向を事前にしっかりとすり合わせることが大切です。

 

お金を渡したからといって、子どもの人生を決める権利まで得られるわけではありません。老後の豊かさを考えるうえでは、資産の多寡だけでなく、家族との関係や、自分自身がどのような時間を過ごしたいのかという視点も欠かせないのではないでしょうか。

 

 

小川 洋平

FP相談ねっと

ファイナンシャルプランナー

 

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