(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●ドル円は9月7日のホルムズ海峡を巡る報道を受けドル安・円高が加速、8日に153円台へ突入。

●CPIやFOMCで米利上げ観測の高まり度合いに注目、中東情勢悪化と原油高は早期解消困難。

●日銀の利上げ織り込み進展が悪い円安を抑制、政府が財政規律配慮なら円安の戻りは限定的。

ドル円は9月7日のホルムズ海峡を巡る報道を受けドル安・円高が加速、8日に153円台へ突入

日本時間の9月7日午後5時前、ホルムズ海峡を巡るイランとオマーンの交渉が最終段階にあるとの報道が伝わると、為替市場では有事のドル買いが後退、損失限定(ストップロス)のドル売り・円買いを巻き込んで一気にドル安・円高が進み、午後5時30分前には一時154円06銭水準に達しました。ドル安・円高の流れは翌8日も続き、同じく日本時間の午前8時過ぎに、ドル円は153円台に突入しました。

 

ここで改めて、ドル円相場を取り巻く材料を整理します。8月12日付レポートでは、ドル高・円安が進みやすい背景として、①米利上げ観測、②中東情勢の悪化と原油高、③日銀の利上げが後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」に対する懸念、④日本の財政悪化懸念、⑤日本の国際収支構造があると指摘しました(図表1)。以下、それぞれについて、現状と先行きについて考えます。

 

(出所)三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ドル高・円安が進みやすい主な背景 (出所)三井住友DSアセットマネジメント作成

CPIやFOMCで米利上げ観測の高まり度合いに注目、中東情勢悪化と原油高は早期解消困難

①の米利上げ観測について、市場では25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げが年内1回、9月実施の確率が6割程度、織り込まれている状況です。11日に発表される8月分の米消費者物価指数(CPI)や、15日、16日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の内容を踏まえ、利上げ観測が高まれば、ドル高・円安の反応が見込まれますが、よほど強い反応でない限り、ドル円が160円台まで一気に戻ることは難しいと思われます。

 

②の中東情勢の悪化と原油高については、ホルムズ海峡を巡るイランとオマーンの交渉結果と、それを受けた米国の対応が目先の焦点です。なお、弊社は米国とイランの紛争はこう着状態が継続し、ホルムズ海峡の航行正常化には時間がかかるとみており、原油価格は高止まりを想定しています(北海ブレントは今年平均で1バレル=82ドル)。そのため、②は早期解消が難しく、ドル高・円安の材料となり続ける可能性が高いと考えています。

日銀の利上げ織り込み進展が悪い円安を抑制、政府が財政規律配慮なら円安の戻りは限定的

8月12日付レポートでは、⑤の収支構造の変化にはかなりの時間を要するため、政府が直ちに日銀による適切なタイミングでの利上げに理解を示し、財政規律への配慮で③と④の懸念を払しょくできれば、為替介入を繰り返さなくても、一定の円安抑制効果は期待できると指摘しました。直近では、ベッセント米財務長官から日銀の利上げ支持と受け止められる発言もあり、現時点で③のビハインド・ザ・カーブ懸念は払しょくされたと推測されます。

 

一般に、利上げの織り込みが進み、インフレ抑制の信認が高まれば、国債利回りは残存期間の短いゾーンほど上昇し、長いゾーンの上昇は抑制されやすくなりますが、実際、日本国債の利回りはそのように変化しており(図表2)、悪い円安の抑制要因になったと考えます。ドル円は年初1月27日につけた152円10銭水準が視野に入りつつありますが、政府が財政規律に配慮すれば、円安方向の戻りはかなり限定される公算が大きいとみています。

 

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日本国債の利回り曲線 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ドル安・円高のさらなる進行でドル円は153円台に~目先の材料整理【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

 

市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト

 

 

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