家計簿をつけて気づいた年間支出、「このままでは続かない」
「お母さん、今度みんなで焼き肉に行かない?」
その連絡を受けたとき、智子さんは初めて長女にこう伝えました。
「行くのはいいけど、今度は自分たちの分は払ってね」
長女は少し驚いた様子でしたが、「もちろんいいよ」と答えました。
智子さんが心配していたような気まずい空気にはなりませんでした。それでも、長年続けてきた習慣を変えるのは簡単ではありません。
孫が遊びに来た日、「今日はお小遣いないの?」と冗談交じりに聞かれたこともありました。
「その瞬間は、やっぱり渡そうかなと思いました。でも、お菓子を一緒に食べて、ゲームの話を聞いていたら、それで普通に楽しそうにしているんですよね」
それから智子さんは、孫に使うお金を年間でおおよそ決めるようになりました。
誕生日や進学などの節目はこれまで通り祝います。一方、遊びに来るたびのお小遣いはやめ、外食も毎回自分が支払うことはしません。娘一家の生活費や習い事についても、頼まれていないものを先回りして援助するのはやめました。
「お金を出すことが嫌になったわけではないんです。むしろ、これからも出してあげたいから、使い方を決めようと思いました」
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしの人は増加傾向にあり、2020年時点で65歳以上人口に占める割合は男性15.0%、女性22.1%。2050年には男性26.1%、女性29.3%になると見込まれています。
一人で老後を暮らす場合、現在の生活費だけでなく、住まいの修繕や家電の買い替え、将来の介護など予測しにくい支出にも備える必要があります。
智子さんはいまも、孫の誕生日には本人の希望を聞き、プレゼントを選んでいます。
「去年より金額は小さいです。でも、渡したときに喜んでくれるのは同じでした」
家族のためにお金を使うこと自体が問題なのではありません。ただ、「1回くらい」「これくらいなら」と繰り返していると、年間では想像以上の額になることがあります。
孫を喜ばせることと、自分の老後資金を守ること。そのどちらかを諦めるのではなく、無理なく続けられる範囲を決めることが、長い老後には必要なのかもしれません。
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