(※写真はイメージです/PIXTA)

戸建ては部屋数や収納に余裕がある一方、年齢を重ねると階段の上り下りや庭の手入れ、買い物のための移動などが負担になることがあります。長く暮らした家への愛着があっても、「これからの暮らしやすさ」を優先して住み替える人もいます。老後の住まいに必要なのは、広さだけではないのかもしれません。

手放したのは広さと庭…駅近マンションで手に入れたもの

引っ越しで最も大変だったのは、荷物を減らすことでした。

 

「食器棚が入りません」「このタンスも置けません」と不動産会社から説明され、美智子さんは最初、「こんなに捨ててまで引っ越す必要があるのかな」と迷ったといいます。

 

子どもたちが使っていた机や古い布団、何年も開けていなかった段ボール。夫婦で少しずつ処分しました。

 

ところが、引っ越して数ヵ月がたつと、印象は変わりました。

 

朝起きて寝室からリビングへ行くのも、洗濯して収納するのも同じフロアです。ゴミ出しや宅配便の受け取りも以前より楽になりました。駅が近いため、電車で出かける機会も増えたといいます。

 

夫も「車がなくても何とかなる場所なら、免許を返すときも困らないな」と話すようになりました。

 

一方、マンションならではの支出もあります。管理費と修繕積立金、固定資産税などは継続してかかります。将来、修繕積立金が引き上げられる可能性もあります。戸建てのように自分の判断で修繕時期を調整できるわけでもありません。

 

夫婦は購入前に、年金月33万円の範囲で毎月の固定費を無理なく負担できるかを確認しました。さらに、住み替えに預貯金を使いすぎないよう、売却代金を中心に購入資金を組み立てました。

 

総務省『令和5年住宅・土地統計調査』は、住宅やそこに住む世帯の実態を把握し、住生活に関する施策の基礎資料とする調査です。超高齢社会を迎えるなか、高齢者の住まい方をより的確に把握することも調査の主要な目的の一つとされています。

 

「昔は家を買うなら、広いほうがいいと思っていました。庭があって、子ども部屋があって。それが豊かな暮らしだと思っていたんです」

 

美智子さんはいま、60平方メートルほどになった自宅を「ちょうどいい」と感じています。

 

「狭くなったのに、前より楽です。今は部屋が一つ多いことより、スーパーまで5分で行けるほうがありがたいですね」

 

若いころに選んだ「家族を育てるための住まい」が、そのまま高齢期にも最適とは限りません。ただし、駅近マンションへの住み替えが誰にでも適しているわけではなく、購入費だけでなく管理費や修繕積立金、固定資産税などを含めた長期的な負担を確認する必要があります。

 

老後の住まいを考えるとき、資産価値や広さだけでなく、「80歳になっても日常生活を続けやすいか」という視点を持つことも大切です。美智子さん夫婦にとっての住み替えは、家を小さくする選択というより、これからの生活に必要なものを選び直す機会になったようです。

 

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