「お母さんのことは大切。でも…」
その日の夜、香織さんは母に思いを打ち明けました。
「お母さんのことは大切。でも、もう限界なの。私も自分の人生を生きたい。今のままでは続けられない」
香織さんは改めて地域包括支援センターに相談。母も説得を受け、訪問介護やデイサービスを利用することになりました。介護のすべてを担う必要がなくなると、香織さんにも少しずつ自分の時間が戻ってきました。
その後、母の状態が進行したため、最終的には介護施設への入居を決めました。施設を見学した帰り、母は香織さんにこう言ったそうです。
「香織、ありがとう。これからは自分のために時間を使ってね」
その言葉に、香織さんは涙が出たといいます。
「人に任せたり、施設に入れるのは、母を見捨てることだと思っていました。でも、そうじゃなかった。母のために、自分の人生まで諦める必要はなかったんです」
親の介護で自分の人生まで犠牲にしない
厚生労働省によれば、要支援・要介護認定者は2021年度末で約690万人。2000年の約256万人から20年余りで倍増しています。介護は一時的なものではなく、長期にわたることも少なくありません。
また、総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、介護・看護を理由に過去1年間に前職を離職した人は10万6,000人。うち8万人が女性でした。
介護は、家族の仕事や収入、生活そのものに大きな影響を与えます。だからこそ、「親のために」と一人で抱え込むことには注意が必要です。介護サービスを利用することも、施設への入居を検討することも、親を見捨てる行為ではありません。
いくら親を思う気持ちがあっても、自分一人での介護には限界があります。
介護サービスや公的支援を活用することは、甘えではなく、責任ある選択です。今後、誰もが直面する可能性がある介護。早めの準備と理解が、家族が安心して暮らすための鍵になります。
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