「東京に帰りたい」でも、売れない
最初の冬を越したころから、今野さんは東京に戻ることを考えるようになりました。しかし、ここで大きな問題が立ちはだかります。購入時に28万円だったマンションは、いくら価格を下げても買い手がつきません。
「最初は、『28万円で買ったんだから、10万円くらいで売れればいいかな』と思っていました。でも、問い合わせすらないんです。じゃあ5万円ならどうだ、もっと安くしたらどうだ、と考えても、そもそも買ってくれる人がいない」
所有している限り、管理費や修繕積立金、固定資産税などの負担は続きます。かといって、マンションをそのままにして自分だけ東京へ戻れば、住んでいない家のために費用を払い続けることになります。
「東京に戻りたいのに、家が売れない。じゃあ、どうすればいいのか……」
格安で手に入れたはずのマンションが、今度は今野さんを苗場につなぎ止める“重し”になってしまったのです。
「安いから買う」前に考えるべきこと
老後、年金暮らしになれば、「家賃を払い続けるのが不安」「広い部屋で暮らしたい」と考えるのは自然なことです。
実際、苗場のリゾートマンションには、約50平米の物件が10万円程度で売り出されるケースもあり、都市部では考えられないほど安価に購入できる物件があります。しかし、価格が安いことだけを理由に、「合わなければ売ればいい」と考えるのは危険です。
購入前には、管理費や修繕積立金、固定資産税など、年間でどの程度の維持費がかかるのかを確認する必要があります。また、築年数や建物の管理状況、大規模修繕の予定なども確認しておきたいところです。
そして、もう一つ忘れてはいけないのが、自分自身の「老い」です。購入したときは65歳だった今野さんも、現在は68歳。今は車を運転し、雪道を歩くことができても、70代、80代になって同じ生活ができるとは限りません。
「買ったときは、28万円でこんなに広い家が持てるんだから、いい買い物をしたと思っていました。でも今は……東京に帰りたいです。そのためには、この家をどうにかしないといけない。まさか、手放すのがこれほど難しいとは思いませんでした」
重要なのは、いくらで買えるかだけではなく、いくらで維持できるか。そして、いざというときに手放せるかまで考えることです。「安いから」「広いから」――。そんな魅力に惹かれて手に入れた住まいが、老後の生活を縛ることもある。そのリスクを、今野さんのケースは教えてくれます。
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