「こんなに大変だとは…」想像を超えた冬の日々
引っ越したのは、雪のない時期でした。春から夏にかけては、山の緑に囲まれた環境が心地よく、多少の不便さはあったものの「ここを選んで正解だった」と感じていたといいます。
朝、窓の外を見ると、駐車場も道路も雪に覆われています。移住するときに購入した軽自動車も、雪に覆われ、すぐに出発できる状態ではありません。
「雪が降ることは分かっていました。でも、実際に暮らしてみると、想像していた以上でした。車を出そうと思っても、まず雪をどかさなければいけない。しかも、それが何日も続く。車は諦めてバス停までなんとか歩いても、遅延や運休も少なくありません」
厳しい寒さも想像以上でした。健康には自信がありましたが、室内で暖房を使っていても、骨から染みるような冷え込みに布団にいる時間が長くなりました。体調が悪くなっても、病院まで雪の中で行くのは厳しい……そんな不安が募りました。
「買い物も、ちょっと甘く見ていました。今はネットで何でも買えるじゃないですか。だから、買い物についても、そこまで心配していなかったんです。でもね……」
東京で暮らしていたときとは勝手が違い、注文すれば翌日に届くという感覚で生活することはできません。雪の状況によっては配送に時間がかかることもあり、注文するにしても、届くまでの日数を考えて、早めに買っておかないといけません。
さらに、車を維持するためのガソリン代や冬用タイヤ、部屋の暖房費なども家計に重くのしかかりました。
総務省の「家計調査」によると、2025年の65歳以上の単身無職世帯では、消費支出が月14万8,445円。税や社会保険料などの非消費支出も月1万2,990円かかっています。年金月14万円の今野さんにとって、車や暖房、住宅の維持費が加われば、家賃がなくなったからといって決して安心できる状況ではありません。
「冬を越してみて、思ったんです。『これ、70代、80代になっても続けられる生活なのかな』って。考えが甘かった、というのが正直なところでした」
