働けなくなった途端に赤字転落…公的年金だけでは賄えない現実
子どもや孫のためにお金を使うこと自体が悪いわけではありませんが、山田さん夫婦の場合、考えなければならない問題があります。
現在の生活は、山田さんが今後も「働き続けられること」を前提に成り立っていることです。月18万円程度の公的年金に加え、出張美容師として月10万円程度を稼いでいるため、現在は月28万円程度の収入があります。
とはいえ、72歳の山田さんがいつまで同じように働けるかはわかりません。
総務省「家計調査」の2025年平均によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1ヵ月の実収入は平均25万4,395円、税・社会保険料などを除いた可処分所得は22万1,544円でした。一方、消費支出は26万3,979円となっています。平均的な高齢夫婦であっても、可処分所得だけでは消費支出を賄えていないことがわかります。
もちろん、これはあくまで平均値であり、それぞれの家庭によって必要な生活費は異なるため、「自分たちの場合はいくら必要なのか」を把握することが重要です。
山田さんが働けなくなれば、基本となる収入は夫婦の年金18万円のみ。さらに年齢を重ねれば、医療費や介護費など、一層支出が発生する可能性もあります。その状況で、「息子が帰ってくるから」「孫が喜ぶから」と年間数十万円を使い続けてよいのか――。一度立ち止まって考える必要があったでしょう。
親の「当たり前」が子ども世代の「負担」にも
「これだけお金を使ってあげている」という認識は、子どもたちにとって押し付けとなりかねません。同時に、夫婦の老後資金を圧迫する要因にもなります。
子どもや孫にお金を使うこと自体が問題なのではありません。問題なのは、自分たちの老後資金を把握しないまま支出し、そのお金に無意識の「見返り」を求めてしまうことです。
「これだけしてやったんだから、帰ってきて当たり前」といった山田さんの考えが、息子夫婦にとっては負担になっていたのです。「お盆や正月は実家に帰省が当たり前……」多くの人にとってこういった意識はありますが、親にとっての当たり前が、子どもやその配偶者にとっても当たり前とは限りません。
もちろんお盆や正月などは、普段離れて暮らす家族が久々に会える貴重な機会です。帰省にかかる費用も、子どもたちをもてなすための費用も、お互いに無理をする必要はないはずです。
親には親の生活があり、子には子の生活があります。特に現在は、昔のように「お盆になったら家族全員で実家へ帰る」という形だけがコミュニケーションの選択肢ではないでしょう。帰省費用、子どもの教育、仕事の都合、そして配偶者の負担、それぞれの事情を尊重しながら、お互いによい関係性を築ける距離感を考える必要があるのではないでしょうか。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
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