息子夫婦が帰省を拒む理由
「ごめん。今年も帰れないと思う」
その一言に、山田さんは耳を疑いました。「おばあちゃんの十三回忌にも戻れないとは、どういうことだ!」これまで我慢していた不満が、一気に噴き出しました。
「墓参りにも来ない。孫の顔も見せない。こっちはお前たちが帰ってくるたびに、どれだけしてやったと思ってるんだ!」
すると、それまで父親の話を黙って聞いていた息子も、ついに本音をぶつけます。
「頼んでないだろ。帰るたびに金を使って、だから帰ってこいっていわれても困るんだよ。こっちだって子どもの塾代もあるんだ」
息子一家にも事情がありました。12歳になる子どもはこれから進学を控え、塾や習い事への支出が増えていました。物価も上がるなか、数万円かかる実家への交通費は決して小さな出費ではありません。
さらに、帰省に消極的だったのは息子だけではありませんでした。妻もまた、夫の実家へ帰ることに大きな負担を感じていたのです。
山田さん宅はいわゆる「本家」。お盆や正月には多くの親戚が集まります。ところが、昔ながらの習慣が残るこの家では、女性たちが作った料理を並べ、食後の片付けをする横で、男性陣は素知らぬ顔で居間に座り酒を飲んでいる……。そんな光景が当たり前でした。息子はそんな妻と実家との板挟みになっていたようです。
それでも山田さんは、「昔は盆と正月に実家へ帰ってくるのが当たり前だった!」と納得できません。
口論の末、ついに山田さんはいってはならない一言を口にします。
「もういい。お前なんて、もう息子じゃない!」
電話は切れ、その後、息子から連絡が来ることはほとんどなくなりました。
孫に会いたくて、喜んでもらいたくてお金を使ってきた山田さんでしたが、思わぬ形で関係が切れてしまうことになったのでした。
