修繕積立金については国交省がガイドラインを作成
<ケース紹介>
商品開発をしているHさんは、現在独身です。「ずっと仕事を続けていきたいけれど、将来、結婚や出産・育児ということになったら、就労時間が短くなって、収入が減るかもしれない。それでもマンションを所有し続けられるだろうか」と、とても心配していました。
月々のローンは家賃収入で十分支払えることはわかっています。けれど、急に多額の修繕費を求められたり、管理費が大幅に値上がりしたりすることはないのかと不安に思っていたのです。
セミナー後の個別相談で、管理費・修繕積立金の説明を受け、「このくらいの変動だったら大丈夫!」と納得し、マンション投資を始めました。
<説明>
管理費は、日常的な管理業務に使われるもので、新たに設備を導入するなどしないかぎりは、基本的には変動しないものです。しかし、物価上昇時には増額する可能性があります。
修繕積立金は、建物を長期にわたって維持するために、共用部分の補修や計画的な修繕に向けて積み立てるものです。修繕積立金については、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に基本的な知識や修繕積立金の額の目安などが示されています。
同ガイドラインでは、修繕積立金の使用用途として、19の項目を挙げています(以下図表1参照)。
[図表1]マンションにおける修繕積立金の使用用途
徴収方法には、「段階増額方式」「均等方式」「一時金方式」の3種類があります。
●段階増額方式
現在多くのマンションで採用されている方式です。長期修繕に必要な費用の総額を計画に基づいてあらかじめ算出し、必要に応じて数年ごとに段階的に増額をします。購入当初の負担額は小さく、徐々に大きくなります。
[図表2]段階増額方式
●均等方式
毎月同額を均等に積み立てる方式です。金額が決まっているので計画が立てやすいという長所がありますが、長期修繕計画が変更になると増額になることがありますので、注意が必要です。
●一時金方式
大規模修繕工事が必要になったときに、そのつど一時金を徴収する方式です。修繕の規模によって徴収される額はさまざまですが、急に多額の費用が発生することもあります。
一般的に、マンション購入時に「修繕積立基金」としてまとまった額を徴収し、その後、各方式をとります。
管理費と修繕積立金は、マンションのオーナーで構成される管理組合が徴収・管理します。いずれも、マンションの資産価値を維持し、安定的に家賃収入を得るためには必要な費用です。
設備の修理代など、予想外の出費も想定しておく
<アドバイス>
管理費や修繕積立金の増額は、管理組合の決議によって決定することになっていますから、一方的に極端な増額がされたり、急に多額の出費を求められたりすることはありません。
気をつけなければいけないのが、修繕積立金以外にも、修繕費として必要なコストがあることです。部屋のなかの修繕費、つまりエアコンや温水洗浄便座、給湯器等の設備の交換費用は、原則オーナー負担となります。
ただし、入居者の故意や過失によって損傷し、交換する場合は、入居者が負担することになります。交換の目安は、一般的には10年から15年ほどといわれています。こういった費用についても、支出として計算に入れておきましょう。
マンションを所有するうえで必要そうな費用をすべて書き出し、その金額を月数で割って平均を出し、毎月その分をプラスで考えておくと安心です。
例えば、部屋のなかの設備の修繕に10年で10万円かかると見積もります。1年で1万円、1か月で約800円を最初から積み立てておくのです。急に10万円の出費が必要、となると負担は大きいですが、月々800円を積み立てるのであれば、計画に無理なく取り入れることができます。
こういった支出は、家賃を安定的に得るために必要な支出です。設備が壊れた状態のままでは入居者がつかなかったり、家賃を大きく下げることにもなりかねません。