ファミリービジネスを守るための重要な役割
婚前契約書は企業経営者や資産家にとっても重要です。特にファミリービジネスでは、離婚によって会社の持分が意図しない相手へ移転するリスクがあります。
また、結婚期間中に会社の価値がどれだけ増加したのかという評価を巡って争いになることもあります。事業承継が課題となる企業ほど、婚前契約書は経営リスク管理の一部として活用されています。
共有財産制の州でも万能ではない
米国にはCommunity Property(共有財産制)を採用する州があります。こうした州では、婚姻期間中に形成された財産は原則として夫婦共有財産とされます。
それでも婚前契約書によって、どこまでを個人財産として扱うのかを明確にすることは可能です。
ただし、配偶者への扶養義務や生活支援については州法による制約があり、婚前契約書だけで完全に排除できるわけではありません。
さらに、夫婦合算申告によって発生した税金については連帯責任となるため、婚前契約書によって責任を免れることもできません。
「離婚の準備」ではなく「結婚の準備」
婚前契約書というと、「離婚を前提に結婚するのか」という否定的な見方もあります。
しかし米国では、むしろ逆の考え方が広がっています。結婚前にお互いの財産状況や負債、将来設計について率直に話し合うことで、結婚後のトラブルを未然に防ぐことができるという考え方です。
お金の問題は夫婦間のトラブルの大きな原因の一つです。そのため、結婚前にあえて難しい話を済ませておくことが、結果として関係の安定につながると考えられています。
日本でも広がる可能性はあるのか
日本でも離婚時の財産分与や相続を巡る争いは増加しています。高齢化によって相続財産が拡大し、共働き世帯の増加によって夫婦それぞれが資産を形成する時代になりました。
そうした環境の変化を考えると、婚前契約書は決して一部の富裕層だけの問題ではありません。もしテイラー・スウィフトさんとトラヴィス・ケルシーさんが本当にこの夏結婚するのであれば、その裏では弁護士や専門家を交えた綿密な婚前契約書の準備も進んでいることでしょう。
そして、その姿は将来のリスク管理として婚前契約書を活用するアメリカ社会の価値観を象徴しているのかもしれません。日本でも今後、「結婚前に財産のルールを決める」という考え方が広がっていく可能性があります。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
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