何十年にも遡る「追徴課税」——米国の税務調査に日本人が戸惑う理由とは【国際税理士が解説】

何十年にも遡る「追徴課税」——米国の税務調査に日本人が戸惑う理由とは【国際税理士が解説】

日本の税務調査では、一般的な時効は3年、問題が見つかった場合でも5年、悪質なケースでも7年とされています。一方、米国では、過少申告の割合や海外所得の有無、さらには居住州によって時効が大きく異なり、場合によっては「時効なし」で無期限に遡って調査を受けることもあります。特に、海外口座や海外法人に関する申告義務は厳格で、申告漏れには高額な罰金が科されるケースも少なくありません。本稿では2026年4月末に刊行した『トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か――税制が映し出すアメリカの真実』から一部を抜粋して、日本企業の米国進出や富裕層の海外資産運用が増えるなか、日本とは大きく異なるアメリカの税務調査制度について詳しく解説します。

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日本と異なる税務調査――時効がなくなるケースも

日本の税務調査における時効は、一般的には3年、問題が見つかった場合は5年、悪質な場合は7年と定められています。しかし米国では、過少申告の度合いや居住州によって大きく異なるため、米国に進出した企業や日本人個人は複雑さに戸惑うことが少なくありません。

 

米国連邦税に関するIRSの税務調査では、原則として時効は3年とされています。

 

しかし、例外も存在します。

 

●総収入の25%以上を過少申告した場合:時効は6年に延長例:収入20万ドルのうち14万ドルしか申告していなければ、未申告分6万ドルが過少申告と見なされ、時効は6年。

●過少申告が詐欺・不正行為に関連する場合:時効なし、無期限に遡って調査可能

●海外からの収入が5,000ドル(約75万円)を超える場合:時効は6年に延長

 

さらに、海外口座からの利息や配当収入がある場合、納税者はFBAR(Foreign Bank Account Report)により米国財務省へ申告する義務があります。

 

また、海外法人の持ち分から配当を受ける場合は、「Form 5471」を申告書とともに提出しなければなりません。

 

これらの申告を怠った場合、1件につき1万ドルの罰金が科され、追加の罰金や刑事罰を受けることもあります。そのため、国外関連の収入がある場合は、税務申告に神経を使わざるを得ません。

州ごとに異なる時効――カリフォルニア州の場合

たとえば、筆者のオフィスがあるカリフォルニア州では、時効は原則4年です。ただし、無申告や重大な誤り、不正のある申告書に対しては時効がなくなり、無期限に遡って追徴課税が行われます。

 

カリフォルニア州は個人住民税の最高税率14.4%、法人地方税の最高税率8.84%と全米でも高税率で知られています。また、州外に転居しても、カリフォルニア州は税を課そうと追跡してくる場合があり、注意が必要です。

 

IRSで追徴課税が発生した場合、6カ月以内にカリフォルニア州税務当局(Franchise Tax Board:FTB)に通知する義務があります。通知がなければ時効がなくなり、たとえ10年後にニューヨークに居住していても、カリフォルニア州から追徴課税の通知を受ける可能性があります。

 

一方、FTBによる税務調査が行われ、IRSの時効を超えていた場合には、IRSでは追徴課税が行えませんが、州税(FTB)による追加徴税は発生し得ます。このように、連邦税と州税の時効は独立しているため、複雑さが増します。

上訴制度と弁護士の重要性

税務調査の結果に不服がある場合、IRSではIRS Appeals Office(控訴局)に上訴し、それでも解決しなければUS Tax Court(税務裁判所)で争います。

 

カリフォルニア州の場合は、California Office of Tax Appeal(カリフォルニア州税務控訴委員会)で争うことになります。

 

米国では、税務専門の裁判所や上訴制度が整備されているため、判決の信頼性は高い一方で、手続きや争いは非常に専門的です。そのため、税務専門の弁護士を雇うことがほぼ必須となります。

 

日本の場合、税務署の判断に不服がある場合は国税不服審判所、さらに納得できなければ地裁に持ち込むことになります。しかし、裁判官は税務専門家でないことが多く、複雑な税務争いでは判断が難しくなる場合があります。

 

奥村眞吾
税理士法人奥村会計事務所 代表

 

 

※本連載は、ゴールドオンライン新書で刊行された書籍から一部を抜粋・再編集したものです。

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