(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後は持ち家が安心」。そう考える人は少なくありません。住宅ローンを完済すれば、家賃負担なく暮らせる――確かにそれは大きなメリットです。しかし、子育て期に建てた広い家が、高齢期には“負担”へ変わることもあります。維持費、修繕費、階段の上り下り。年齢を重ねるにつれ、「住み慣れた家」が生活の重荷になっていくケースもあるのです。

2DK公営住宅で始まった新生活

転居を決断するまでには、葛藤もありました。

 

「せっかく建てた家なのに」

「子どもたちに残したほうがいいのでは」

 

そんな思いが頭をよぎったといいます。しかし、子どもたちの反応は意外なものでした。

 

「“無理して住み続けなくていいんじゃない?”と言われたんです」

 

その言葉に背中を押され、夫婦は住み替えを本格的に検討。最終的に選んだのは、駅から近い2DKの公営住宅でした。

 

家賃は収入に応じて決まり、以前より住居費の負担は大きく軽減されました。

 

「最初は、“狭いな”と思いました。でも、掃除も楽だし、移動も少ない。何より安心感が違いました」

 

国土交通省『令和5年度 高齢社会に関する意識調査(高齢期の住み替えについて)』でも、高齢者が住み替えを検討する理由として、「住宅の維持管理が負担」「バリアフリー環境への不安」などが挙げられています。

 

また、持ち家を維持すること自体が、高齢期の経済的・身体的負担になるケースも少なくありません。夫妻も、引っ越し後にその実感を強く持ったといいます。

 

「“広い家=豊か”だと思っていたんですが、今は“無理なく暮らせること”のほうが大事だと感じています」

 

もちろん、寂しさがないわけではありません。庭もなくなり、仏壇も小さいものに替えました。子どもの成長記録や家具も、多くを処分せざるを得ませんでした。

 

それでも、夫婦は今の生活を後悔していないといいます。

 

「“家を守るための生活”になっていたんですよね。でも、本来は“自分たちが安心して暮らす”ための家だったはずなんです」

 

高齢期の住まいは、資産価値だけでは測れません。維持できるか、安全に暮らせるか、無理なく生活できるか――その視点が、年齢を重ねるほど重要になります。

 

「広い家が夢だった時代もありました。でも今は、“ちょうどいい暮らし”が一番ありがたいです」

 

 

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