経験を削ぎ落とした40年の代償
退職後、待ちに待った人生の自由時間が手に入りました。しかし、高木さんにはその時間を使ってやりたいことがありませんでした。
「『老後は旅行に行きたい』なんて言う人は多いですよね。私もそう思っていた時期がありました。でも、いざ自由になってみると、そんな気持ちはもう消えてしまっていた。いまさら言葉の通じない国で不安になりたくない。食事も日本が一番おいしいだろう、衛生的だろう……ってね」
若い時にはあったはずの好奇心は、もう錆びついてしまった――そう語ります。
また、最近の高木さんは、週末になるとカーテンを閉め切って過ごすことが多いと言います。
「孫連れの同世代を見ると、むなしくなってしまって。もし彼らに金銭的な余裕がなかったとしても、どちらが豊かな人生だったのか、答えは明白です」
年末年始、GW、お盆休みなどの長期休暇の孤独感はひとしお。「早く終わってほしい」と思いながら、家で静かに過ごす日々です。
「NISA貧乏」にも警鐘
内閣府の「令和6年度経済財政白書」では、85歳を過ぎても金融資産の減少幅は小さく、貯めてきた老後資産が使われずに保有されているという、日本特有の“貯め込み”の傾向が報告されています。
お金は人生を支える「手段」であって、「目的」ではありません。 体力が低下してからでは楽しめないことがある。感性が瑞々しいうちに触れるべきものがある。大切な人と過ごす時間は、後から買い戻すことはできない――。
高木さんの現在の資産7,300万円。病気になっても、老人ホームに入ることになっても、金銭的な不安は一切ありません。それは、高木さんが積み重ねてきた努力の結果にほかならず、これを称える人もいるでしょう。
高木さんも「誰にも迷惑をかけないで生きられる、それはよかった」と笑顔を見せつつも、最後にこう語りました。
「死ぬ時に一番お金を持っている状態というのは、言い換えれば一番の失敗。もっと誰かを喜ばせたり、自分をワクワクさせたりすればよかった。いま“NISA貧乏”といって、投資にお金を回す若い人がいるといいますが、何事も“適度”がいい。今を捨ててまで老後に備えるなんて、私のように後悔することもあるんじゃないでしょうか」
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