(※写真はイメージです/PIXTA)

iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度改正により、50歳以上を対象とした「追加拠出枠」の導入が現実味を帯びてきました。本来なら「非課税で積み立てられる枠が増える」という喜ばしいニュースのはずですが、SNSやネット掲示板では、就職氷河期世代を中心に「結局、年金だけでは生活できないという白旗宣言ではないか」と怒りの声が渦巻いています。かつて「失われた時代」を生き抜き、ようやく老後がみえてきた世代にとって、政府の「自助努力」の押し売りとも取れる姿勢は、公的年金への不信感を煽る火種となっているようです。しかし、感情を一度脇に置いて冷静に制度を見渡せば、世間で囁かれる「年金破綻論」がいかに非現実的であるかわかります。本記事では、日本の年金制度についてFP1級の川淵ゆかり氏がわかりやすく解説します。

政府と国民、それぞれが抱くギャップの正体

整理すると、ギャップの正体は政府と国民のイメージのズレにあります。

 

政府側のイメージ

「公的年金+必要があれば生活保護」で“最低限”は守るものの、その上の水準は、就労や貯蓄、私的年金で各自が積み上げてほしい。

 

国民側のイメージ

長年保険料を払ってきたのだから、公的年金だけで“慎ましければ”普通の老後生活は送れるはず。

 

ここでいう「最低限」と「慎ましい普通の暮らし」のイメージが、実はかなり違うのに、同じ「基礎」「基本的部分」という言葉で語られていることが、誤解を生みやすいポイントです。年金制度への不信は、制度そのものよりも「国と国民のイメージのズレ」から生まれています。そして、この誤解が国民の不信や将来不安につながり、現在の消費縮小となって表れているのです。

「年金は破綻しない」の本当の意味

そして、このギャップは、「破綻しない年金」にもあります。政府がいう「年金は破綻しない」の意味は、

 

・賦課方式

・マクロ経済スライド

・在職老齢年金の支給停止

・積立金の活用

 

により、保険料や給付水準を変えていきながらでも「年金制度を継続できる」という意味合いが中心です。裏を返せば、

 

・給付開始年齢が上がる

・実質的な年金額が目減りする

・働く期間が延びる

 

といった「国民の痛み」を伴っても、制度そのものを継続させるというのが“破綻しない年金”の正体といえるでしょう。

目指すべきは「幸せに老いる国」

筆者は、日本は「高齢化社会でも高齢者が幸せに暮らせる国」をアピールできる制度作りをしていかなければ、国は衰退してしまうと考えます。

 

現状の制度作りは、ギャップ(不信感)をそのままに自助努力(投資)に向かわせるばかりです。公的年金や社会保障への信頼という「土台」が弱いまま、自助努力や投資だけを強く求めても、人々の不安は解消されず、消費は伸びないまま貯め込む一方となります。高齢化が進み、平均寿命が伸びても、「この年までこの国で生きていてよかった」といえるような制度や物語をきちんと示せなければ、国としての魅力や活力も失われていくのではないでしょうか。

 

そのためには、単に「破綻しないように削っていく」年金制度ではなく、高齢者の生活の質をどこまで保障したいのかという「水準の目標」を明確にし、そのうえで、世代間でどう負担を分かち合うか、どこまでを税や社会保障で支えるのか、こういった点を国民にわかるようオープンに議論する必要なのだと思います。そもそもの「理念から設計をやり直す」発想が、本当は不可欠なのでしょう。

 

〈参考〉

第6回社会保障審議会年金部会 平成23年11月11日  参考資料4ページ目

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uwbd-att/2r9852000001uwgq.pdf

 

平成13年9月厚生労働省年金局 公的年金制度に関する考え方(第2版)26ページ目、37~38ページ目

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/nenkin/seido/dl/1.pdf

 

厚生労働省 教えて!公的年金制度 少子高齢化にどのように対応しているの?

https://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/01/01-04.html

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所代表

ファイナンシャルプランナー

 

 

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