政府と国民、それぞれが抱くギャップの正体
整理すると、ギャップの正体は政府と国民のイメージのズレにあります。
政府側のイメージ
「公的年金+必要があれば生活保護」で“最低限”は守るものの、その上の水準は、就労や貯蓄、私的年金で各自が積み上げてほしい。
国民側のイメージ
長年保険料を払ってきたのだから、公的年金だけで“慎ましければ”普通の老後生活は送れるはず。
ここでいう「最低限」と「慎ましい普通の暮らし」のイメージが、実はかなり違うのに、同じ「基礎」「基本的部分」という言葉で語られていることが、誤解を生みやすいポイントです。年金制度への不信は、制度そのものよりも「国と国民のイメージのズレ」から生まれています。そして、この誤解が国民の不信や将来不安につながり、現在の消費縮小となって表れているのです。
「年金は破綻しない」の本当の意味
そして、このギャップは、「破綻しない年金」にもあります。政府がいう「年金は破綻しない」の意味は、
・賦課方式
・マクロ経済スライド
・在職老齢年金の支給停止
・積立金の活用
により、保険料や給付水準を変えていきながらでも「年金制度を継続できる」という意味合いが中心です。裏を返せば、
・給付開始年齢が上がる
・実質的な年金額が目減りする
・働く期間が延びる
といった「国民の痛み」を伴っても、制度そのものを継続させるというのが“破綻しない年金”の正体といえるでしょう。
目指すべきは「幸せに老いる国」
筆者は、日本は「高齢化社会でも高齢者が幸せに暮らせる国」をアピールできる制度作りをしていかなければ、国は衰退してしまうと考えます。
現状の制度作りは、ギャップ(不信感)をそのままに自助努力(投資)に向かわせるばかりです。公的年金や社会保障への信頼という「土台」が弱いまま、自助努力や投資だけを強く求めても、人々の不安は解消されず、消費は伸びないまま貯め込む一方となります。高齢化が進み、平均寿命が伸びても、「この年までこの国で生きていてよかった」といえるような制度や物語をきちんと示せなければ、国としての魅力や活力も失われていくのではないでしょうか。
そのためには、単に「破綻しないように削っていく」年金制度ではなく、高齢者の生活の質をどこまで保障したいのかという「水準の目標」を明確にし、そのうえで、世代間でどう負担を分かち合うか、どこまでを税や社会保障で支えるのか、こういった点を国民にわかるようオープンに議論する必要なのだと思います。そもそもの「理念から設計をやり直す」発想が、本当は不可欠なのでしょう。
〈参考〉
第6回社会保障審議会年金部会 平成23年11月11日 参考資料4ページ目
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uwbd-att/2r9852000001uwgq.pdf
平成13年9月厚生労働省年金局 公的年金制度に関する考え方(第2版)26ページ目、37~38ページ目
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/nenkin/seido/dl/1.pdf
厚生労働省 教えて!公的年金制度 少子高齢化にどのように対応しているの?
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所代表
ファイナンシャルプランナー
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