老後資金と親子関係の境界線
さらに修一さんを悩ませたのは、長男の態度でした。
住宅購入後の返済計画を詳しく聞いても、「何とかなる」という返事が多く、家計の見直しや支出削減にはあまり関心を示しませんでした。
「こちらが援助すればするほど、本人たちが無理な買い物をしてしまうのではないかと感じました」
芳江さんも同じ思いでした。
「助けたい気持ちはあります。でも、親のお金を最初から当てにしているように見えてしまって……甘やかしすぎたかもしれないと思いました」
夫妻は最終的に、1,500万円の援助を白紙に戻すことを決めました。長男には、次のように伝えました。
「援助を前提に物件を決めるのではなく、まず自分たちの収入で無理なく返せる金額を考えてほしい」
長男は当初、強く反発しました。
「今さら無理って言われても困るよ」
それでも、修一さんは譲りませんでした。
「困るのは分かる。でも、親の老後資金をあてにした計画なら、それは最初から無理がある」
その後、長男夫妻は物件価格を下げ、購入時期も見直すことになりました。修一さん夫妻も、支援を完全に拒否したわけではありません。必要であれば、非課税制度の範囲や贈与税の扱いを確認したうえで、無理のない金額を検討するつもりです。
「親だから助けたい。でも、助け方を間違えると、本人たちのためにならない」
家族への援助は、愛情の表れです。しかし、金額が大きくなるほど、感情だけでは判断できません。親の老後、子どもの自立、税制上の扱い。それらを冷静に見たうえで決める必要があります。
「出してあげることだけが親の役目ではないのかもしれません」
夫妻が援助を白紙に戻したのは、見放すためではありませんでした。長男夫妻が、自分たちの生活を自分たちで設計するための、厳しい一線だったのです。
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