(※写真はイメージです/PIXTA)

親から子への住宅購入資金の援助は、珍しいことではありません。若い世代にとって住宅価格の上昇や教育費負担は重く、親世代の支援が購入の後押しになるケースもあります。一方で、援助が大きくなるほど、親自身の老後資金や子どもの自立とのバランスが問われます。善意の支援が、家族関係を揺るがすこともあるのです。

老後資金と親子関係の境界線

さらに修一さんを悩ませたのは、長男の態度でした。

 

住宅購入後の返済計画を詳しく聞いても、「何とかなる」という返事が多く、家計の見直しや支出削減にはあまり関心を示しませんでした。

 

「こちらが援助すればするほど、本人たちが無理な買い物をしてしまうのではないかと感じました」

 

芳江さんも同じ思いでした。

 

「助けたい気持ちはあります。でも、親のお金を最初から当てにしているように見えてしまって……甘やかしすぎたかもしれないと思いました」

 

夫妻は最終的に、1,500万円の援助を白紙に戻すことを決めました。長男には、次のように伝えました。

 

「援助を前提に物件を決めるのではなく、まず自分たちの収入で無理なく返せる金額を考えてほしい」

 

長男は当初、強く反発しました。

 

「今さら無理って言われても困るよ」

 

それでも、修一さんは譲りませんでした。

 

「困るのは分かる。でも、親の老後資金をあてにした計画なら、それは最初から無理がある」

 

その後、長男夫妻は物件価格を下げ、購入時期も見直すことになりました。修一さん夫妻も、支援を完全に拒否したわけではありません。必要であれば、非課税制度の範囲や贈与税の扱いを確認したうえで、無理のない金額を検討するつもりです。

 

「親だから助けたい。でも、助け方を間違えると、本人たちのためにならない」

 

家族への援助は、愛情の表れです。しかし、金額が大きくなるほど、感情だけでは判断できません。親の老後、子どもの自立、税制上の扱い。それらを冷静に見たうえで決める必要があります。

 

「出してあげることだけが親の役目ではないのかもしれません」

 

夫妻が援助を白紙に戻したのは、見放すためではありませんでした。長男夫妻が、自分たちの生活を自分たちで設計するための、厳しい一線だったのです。

 

 

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