「減っているのは分かっていた。でもここまでとは…」
減少の理由は、ひとつではありませんでした。
旅行や外食、趣味の支出に加え、隆さんは退職後に始めた投資でも損失を出していました。知人から勧められた高配当銘柄やテーマ型投資信託を買い増し、相場が下がった局面で慌てて売却したこともあったといいます。
「大きく増やそうとしたわけじゃない。少しでも年金の足しになればと思った」
隆さんはそう説明しました。しかし、恵子さんにとっては寝耳に水でした。
「相談してほしかったです。夫婦のお金なのに、夫だけが判断していたんだと分かって、怖くなりました」
高齢期も働く人は増えています。内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、令和6年の労働力人口比率は65〜69歳で54.9%、70〜74歳で35.6%。年金だけに頼らず、働きながら家計を補う高齢者も珍しくありません。
「このままでは、介護や医療に備えるお金が足りなくなるかもしれない」
そう感じた恵子さんは、夫と家計を洗い出しました。毎月の支出、年間の特別支出、今後必要になる住宅修繕費。初めて数字を並べたとき、隆さんも言葉を失ったといいます。
「俺に任せておけ、なんて言える状況じゃなかった」
現在、夫婦は旅行や外食の回数を減らし、投資商品も整理。隆さんは週2日の短時間勤務を探し始めています。
「責めたい気持ちもありました。でも、今から立て直すしかないですから」(恵子さん)
老後資金は、貯めた時点で終わりではありません。大切なのは、取り崩す速度を可視化し、夫婦で共有することです。
「夫に任せきりにした私にも反省はあります。でも、もう一度、二人で家計を作り直したい」
自信満々だった夫の言葉は、いまでは少し苦い記憶です。それでも夫婦は、残された資産と時間をどう守るか、ようやく同じ方向を向き始めています。
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