「できること」と「できないこと」…突きつけられる現実と選択
田中さんが本格的に家計を見直したのは、通帳残高の減少に気づいたときでした。
「このペースだと、あと何年もたないんだろうって…急に怖くなって」
特に不安を感じたのは、「今後さらに支出が増える可能性」です。
高齢になるほど医療費や介護費用がかさむ傾向にあります。厚生労働省『令和6年版 高齢社会白書』でも、高齢期における医療・介護支出の増加は重要な課題として指摘されています。
また、日本の公的年金制度では、物価上昇に応じて給付額が大きく増えるわけではありません。実質的な購買力は年々低下する可能性もあります。
「今は元気でも、いつどうなるか分からない。入院したり、介護が必要になったら…そう考えると、余裕は持っておかないといけないと思ったんです」
そうした現実を踏まえ、田中さんは決断しました。孫へのお小遣いを「やめる」ことです。もちろん、簡単な決断ではありませんでした。
「正直、あげたい気持ちはありますよ。孫の喜ぶ顔を見るのが楽しみでしたから」
それでも、「続けられないことを無理に続けるほうがよくない」と考えました。その後、長女にも事情を説明します。
「もっと早く言ってくれればよかったのに」
長女はそう言いながらも、「無理しなくていい」と理解を示しました。
「子どもにとっても、お金より一緒に過ごす時間のほうが大事だと思うよ」
そう言われたとき、田中さんは少し肩の力が抜けたといいます。
現在も、孫は変わらず遊びに来ています。お小遣いこそ渡さなくなりましたが、一緒に公園へ行ったり、家でゲームをしたりする時間は続いています。
「最初は申し訳ない気持ちが強かったですけどね。でも、こういう関わり方もあるのかなって」
無理を重ねた先にあるのは、より大きなリスクです。田中さんのように現実と向き合い、支出を見直すことは、決して後ろ向きな選択ではありません。
「長く元気でいることが、一番のプレゼントなのかもしれませんね」
そう語る田中さんの表情は、どこか穏やかでした。
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