(※写真はイメージです/PIXTA)

孫の成長は、現役を退いた世代にとって大きな喜びのひとつです。会うたびに変化していく姿に、つい財布のひもも緩みがちになるでしょう。しかし、その「ささやかな楽しみ」でさえ維持できなくなるケースも少なくありません。年金生活の実態は、外から見えるよりもはるかに厳しい側面を抱えています。

「できること」と「できないこと」…突きつけられる現実と選択

田中さんが本格的に家計を見直したのは、通帳残高の減少に気づいたときでした。

 

「このペースだと、あと何年もたないんだろうって…急に怖くなって」

 

特に不安を感じたのは、「今後さらに支出が増える可能性」です。

 

高齢になるほど医療費や介護費用がかさむ傾向にあります。厚生労働省『令和6年版 高齢社会白書』でも、高齢期における医療・介護支出の増加は重要な課題として指摘されています。

 

また、日本の公的年金制度では、物価上昇に応じて給付額が大きく増えるわけではありません。実質的な購買力は年々低下する可能性もあります。

 

「今は元気でも、いつどうなるか分からない。入院したり、介護が必要になったら…そう考えると、余裕は持っておかないといけないと思ったんです」

 

そうした現実を踏まえ、田中さんは決断しました。孫へのお小遣いを「やめる」ことです。もちろん、簡単な決断ではありませんでした。

 

「正直、あげたい気持ちはありますよ。孫の喜ぶ顔を見るのが楽しみでしたから」

 

それでも、「続けられないことを無理に続けるほうがよくない」と考えました。その後、長女にも事情を説明します。

 

「もっと早く言ってくれればよかったのに」

 

長女はそう言いながらも、「無理しなくていい」と理解を示しました。

 

「子どもにとっても、お金より一緒に過ごす時間のほうが大事だと思うよ」

 

そう言われたとき、田中さんは少し肩の力が抜けたといいます。

 

現在も、孫は変わらず遊びに来ています。お小遣いこそ渡さなくなりましたが、一緒に公園へ行ったり、家でゲームをしたりする時間は続いています。

 

「最初は申し訳ない気持ちが強かったですけどね。でも、こういう関わり方もあるのかなって」

 

無理を重ねた先にあるのは、より大きなリスクです。田中さんのように現実と向き合い、支出を見直すことは、決して後ろ向きな選択ではありません。

 

「長く元気でいることが、一番のプレゼントなのかもしれませんね」

 

そう語る田中さんの表情は、どこか穏やかでした。

 

 

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