債務危機・・・ギリシャの次はイタリアか!?
アメリカの次に、世界経済にインパクトを与える要因は、EUの情勢です。イギリスのEU離脱によって、欧州情勢、欧州経済はどうなるか。中長期的に見れば、欧州情勢はさらに悪化するといわざるを得ません。
ギリシャの債務危機に始まった欧州危機ですが、次はイタリア発となる可能性が高いといわれています。国際金融市場では、すでにイタリアの大手、モンテ・パスキ(モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ)銀行が危ないという噂が流れています。破綻の可能性も指摘されています。モンテ・パスキの経営危機に始まる、イタリア発の信用危機。これが再び欧州に広がるかもしれません。
ただ、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁はイタリア出身。ECBがお金を入れて支えることは間違いないでしょう。
一方でモンテ・パスキが経営破綻すれば、イタリア国債のデフォルトの心配も出てくるため、ギリシャ危機を遥かに上回る信用不安が起こるかもしれませんが、ECB、場合によってはIMF(国際通貨基金)も巻き込んだ金融サポートが展開されるでしょう。
ただ、問題は表面化したタイミングです。大きなショックが市場を襲うことになるでしょう。
下降ぎみのイギリス経済だが、中長期的には回復
一方、EUを離脱することとなった英国は、どうか。私の見方は、多くのメディアが報道している英国の衰退とは、正反対の「イギリス経済はこれからよくなる」というのが私の読みです。
現在、ポンドが売られる状況が続いてイギリス経済は下降ぎみですが、中長期的にはポンドは回復するはずです。そのためポンドが売られている今は、長い目で見れば、むしろ買いのチャンス、だと考えます。ポンドは2016年10月現在、史上最安値となっています。英国はEU離脱で、ポンドが急落、しかしそれで輸出は伸びてくるでしょう。
国の経済の悪化は、通常、通貨安にして調整します。どの国も同じことをします。だからこそ現在のアメリカはドル高を望んでいません。ドル安のほうが景気はよくなるのです。
そのため、円高の日本に対して「介入するな」と釘を刺している状態ともいえるでしょう。つまり、円高・ドル安をアメリカは望んでいるのです。
アメリカの意向にまるで沿うかのように、2016年の円はずっと円高基調でした。間違いなく、アメリカの次期政権も、ドル安を望むでしょう。特にトランプが大統領になれば120%間違いありません。ヒラリーからも、「中国、日本、韓国の為替操作は許さない」という趣旨の発言が飛び出しています。
ちなみに、中国の人民元は、直近暴落しています。中国政府は景気回復のため人民元の下落、通貨安政策を取っているかもしれません。
繰り返しますが、長期的には、英国はよくなる。ポンド安の上に、貿易に対してEUに縛られないフリーハンドを手にしました。大きな規制をこれまで受けていたので、英国にとってフリーハンドは諸手を挙げて喜ぶべき事態です。
ただしあからさまに喜ぶと、EUとの今後の交渉が難航する。
英国の戦術としては、EUとの交渉をできるだけ遅らせて、長引かせたいのが本音。その間、EU域内の「自由貿易」をはじめとしたプラス面は続くため、離脱を決定はしたけれども、新しい協定を結ぶまでは今の状態を維持したいのです。かつて世界を牛耳っていた大国のしたたかさを甘く見てはいけないのです。