家計収支の“見える化”を維持する「2つ」の原則
では、どうすれば今回のような事態を防げたのでしょうか。大切なのは、次の2つの原則です。
1.すべてを一人に預けない
先述したように、通帳・印鑑・キャッシュカードのすべての管理が一人に集中すると、管理を任せた本人も他の家族も状況を確認できなくなります。
たとえば、通帳は本人が手元に残し、カードだけを預ける。あるいは、通帳のコピーを別の家族にも共有しておくなどするといいでしょう。芳子さんのケースでも、通帳さえ手元にあれば、記帳するだけで管理状況を把握できていたでしょう。
2.定期的に家族と一緒に確認する
年に一度でも構いません。通帳を家族と一緒に確認し、お金や暮らしについて話す習慣をつくりましょう。大げさな家族会議である必要はなく、帰省のついでで十分です。
そしてもう一つ、芳子さんの事例から学べることがあります。記帳による確認のように、「本人の行動に依存した管理は、晩年には維持が難しくなる可能性がある」ということです。配偶者との死別、病気、入院など、晩年には、暮らしに大きな影響を与える出来事が増えます。だからこそ、本人の状態に左右されずに機能する仕組みにしておくことが重要です。
また、家族と確認する場を設けても、「なにをどう見ればいいか」が整理されていなければ、うまく機能しません。通帳や届出印の保管場所、口座の数、電気代やインターネット料金などの支払い一覧など、こうした情報をまとめておくツールとして、「エンディングノート」の活用をお勧めします。
万が一のときに、本人以外の誰かが状況を客観的に把握できる環境を整えておくと、家計の安心を持続させることが可能です。
「任せること」と「手放すこと」は違う
芳子さんは「信じた私がバカだった」といいました。しかし、家族に頼ることや信頼して任せること自体は間違いではありません。高齢期の暮らしにおいては自然なことであり、むしろ必要なことです。
ただし、「任せること」と「手放すこと」は違います。任せたあとも、都度自分のお金の状況を確認し、使い道に自分の意思を反映できる状態を保つことが重要です。
いま、自身や親のお金の管理に不安がないとしても、考えてみてください。もし明日、本人が急に管理できなくなっても、スムーズに管理を引き継げる状態になっているでしょうか? もし答えることが難しいのであれば、いまが整理を始めるタイミングかもしれません。
内田 英子
FPオフィスツクル 代表
ファイナンシャルプランナー
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