私がバカだった…次男とともに確認した「衝撃の預金残高」
「ただごとではない」と感じた芳子さんは、次男の誠さん(仮名/49歳)に相談しました。誠さんは遠方に住んでおり、母の財産管理には関わっていません。驚いた誠さんはすぐに新幹線で駆けつけ、芳子さんとともに銀行窓口で取引履歴を確認することにしました。
すると、生活費として渡されていた額をはるかに超える引き出しが繰り返されていたことが判明。預貯金の残高は200万円を切っています。
「……信じた私がバカだったのよ」
顔を手で塞ぎ、小さな声でつぶやきました。
一番の問題は信じたことではなく「確認できない仕組み」
筆者は普段、現役世代を中心に家計設計のアドバイスをしていますが、リタイア前後の方から資産管理や取り崩しについて相談をいただくこともあります。どの場合であっても共通して大切にしているのは、「自分のお金がどこに、いくらあるのか」を本人が把握できる状態をつくることです。
芳子さんのケースを振り返ると、この“把握できる状態”が二段階で崩れています。第一段階は、夫の死をきっかけに家計の全体像を把握できなくなってしまったこと。第二段階は、通帳やカードの管理をすべて長男に任せたことで、確認できる手段を完全に失ってしまったことです。
第一段階の時点で手を打てていれば、第二段階までの進行を食い止めることができたかもしれません。
配偶者を亡くした直後、気力を失うのは自然なことです。しかし同時に、その時期こそ家計面では最も注意が必要なタイミングです。雅之さんに悪意があったのかはわかりませんが、通帳・印鑑・カードといった重要な管理が一人に集中し、任せた本人に確認手段がない状態ができあがった時点で、トラブルが起きやすい構造になっていたことは確かでしょう。
明確な悪意がなくても、構造そのものがトラブルの温床になっていました。


